NaokiAburatani

マンティコア 怪物のNaokiAburataniのレビュー・感想・評価

マンティコア 怪物(2022年製作の映画)
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人は誰しも大なり小なり秘密と欲望を抱えている。
それが世間的にアンモラルなものであればあるほど他人には明かせないもの。ましてやそれがバレてしまった時、周りへの影響は計り知れない。

人を人足らしめているのは何なのだろうか。本能や欲望を完全に理性で蓋を出来る人なんているのだろうか。その本能や欲望がたまたまマイノリティ側で誰にも相談出来ない場合はどうすればよいのだろうか。

今作の主人公フリアンは間違いなく善人だ。同時に善人であることが彼にとって最大の不幸だった。
冒頭の流れる様な彼のクリエイトシーンには惚れ惚れした。後に明かされた彼の秘密が故に自ら怪物であることを自覚し、女性と行為に及ぼうとする努力もしていたのが思い返すと辛いシーンだ。

中華料理屋で描かれていたオドロオドロしい山々のイラストが魔界村っぽいな、と思ったらフリアンの着メロが魔界村だった。また差し入れで寿司を買ったり、同僚が北海道旅行について言及したり随所に親日の要素が垣間見えた。

今作はワンシーンが良く言えば丁寧で長いのだが、場面によっては間延びしているように感じた。中でもディアナとのデートシーンは少しウトウト‥
しかし、クライマックスのクリスチャンの部屋での一幕は丁寧な描写の緊張感が凄まじかった。
最終的にフリアンが怪物にならずに済んだのは、付け入ろうとしたクリスチャンの純粋さと彼が描いていた子供の頃の夢であるキメラのような怪物の姿の自分であったのが何とも皮肉だ。
自分的には正直飛び降りたシーンでエンドロールに入った方が余韻に浸れたような気がした。
身動き取れなくなってから献身的になられてもなぁ‥今さら感あって共感できないラストだった。
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