萩原くわがた

インフィニティ・プールの萩原くわがたのレビュー・感想・評価

インフィニティ・プール(2023年製作の映画)
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超次元的な冷たいバイオレンスとドス黒いグロテスクの映像が見られる!ブランドンクローネンバーグの新作!と数日前からワクワクと劇場へ。

孤島へバカンスに来た悩める新人小説家の男が徐々に精神を歪めていく姿が良い。落とし穴に落ちる人間は決まって悩みを抱えているものだよね。
島で出会った人々との関わりの中で発生する超常的な事件。非倫理的で血生臭くて非生産的で悍ましいんだけど、でもそれは限りなく非日常で特別で中毒性を帯びている。普段真面目な学生が一度コンビニで万引きをしたらハマって常習犯になってしまうののLevel999くらいの事態が起こる。

本当に目を覆いたくなる現象過ぎるんだけど、なんとなくハマっていく姿に理解が出てしまう。そして本作はその邪悪な中毒性からの脱却の苦痛と難しさもエグいくらいに描くんだけどそれがもう凄い…
同監督の前作『ポゼッサー』でも見せた悪夢的なカットで見せる幻覚的映像効果があまりにもおどろおどろしい。脳で直接砂を噛んだような吐き気がする映像が最高。

人間が産まれて死ぬ。その生物のサイクルを見世物にし暴力性に歯止めが効かなくなり人間が崩壊し、その先に見つけたものを描いた本作もまたブランドンクローネンバーグのエネルギーを強く放つ映画だった。