萩原くわがた

ボーはおそれているの萩原くわがたのレビュー・感想・評価

ボーはおそれている(2023年製作の映画)
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自分の話になるんだけど、よくX(旧:Twitter)で外国人同士が喧嘩して殴り合っている動画を見る。麻薬街でゾンビのように歩く動画を見る。歌舞伎町でトー横キッズが問題を起こしている動画を見る。旦那に浮気されて徐々に証拠を集めていく奥様のアカウントを見る。人格破綻的な言動の老男性からお金を引き出す非合法な商売をしている若い女性の投稿を見る。渋谷の街中でレオタード姿になり踊り続ける中年男性の哲学的高次元のポストを読む。
全ては楽しいから。そんな自分がこの映画を見た結果、マジで3時間ずっと楽しかった。自分の心の性悪ツボが刺激を受け続ける。
深い考察をすることが楽しい映画ではもちろんあるんだけど、普通にまず観て”最高”だった。

映画的な話に写っていくと、ボーの身にテンポよく訪れる嫌な『出来事』は突拍子も無く、しかし起こる少し前に嫌な予感を必ず感じさせ、そしてやたら共感性が高い。
なんかエクストリーム事案ばかりなのにやたら想像しやすい。丁寧な地獄づくりだなあと感心する。ボーもボーで弱い男度がすごく高いのであれよあれよと最悪になっていくのが面白すぎる。

陰謀とか精神論が四方八方に香り、ただ目の前で起こる不幸と同時並行でどんどん疑心暗鬼にさせる。モヤモヤするんだけど、とりあえずそれの対処は置いといて目の前の問題を処理しなきゃ…が延々と続いて、気づけばどんどん崖へ近づく。映画で良かったこれが。映画だから安全にこれが観れるんだよな…。

章が四つに分かれているんだけど、割とどれも世界観がガラッと変わってまるで別の映画を見ているかのような多種多様の気持ち悪さとやるせなさが味わえる。ラストのカタルシスは割と凄い。ボーが感じている恐怖がそのまま映像出力されているっぽいのでハイテンションの『誇張しすぎた不幸』が物語を彩りまくる。
笑えるところも沢山あって割と肩の力を抜いて楽しめる邪悪のおせちのような映画。

まあ肩の力が抜けるかどうかは人によるか…