萩原くわがた

悪魔がはらわたでいけにえで私の萩原くわがたのレビュー・感想・評価

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#あくわた
見る人が皆笑顔で困惑できる素晴らしい作品。
『悪魔がはらわたでいけにえで私』まずこのタイトルが素晴らしくて、わざわざこれを見に行く人間というのは、”一定の血みどろ的条件を満たせばあとは何を見せても全部楽しめる人間”であることが明白。
エンタメを成立させる上で重要な、作り手と受け取り手の波長の同調はこのタイトルで全て完了させている。素晴らしい、素晴らしい。
そうして繰り出された作品は、とにかく視聴者の映画作品的常識性をいじめていじめていじめ抜く。困惑に次ぐ困惑。しかし”困惑=つまらない”などと感じる人はおらず、劇場には度々笑い声が漏れていて事実自分も愉快にへへへと笑ってしまった。

絶対に予算が潤沢にある映画ではないけど、悪魔に取り憑かれてしまった人の顔面=死霊のはらわた的特殊メイクは満足度をしっかりとキープした素晴らしい出来栄えで製作者への信頼度満点。
これが徹底されて本気で作られてるおかげで、中盤以降の類を見ない展開の衝撃度が上がる。決してお遊戯ではない遊び、決しておままごとではないやりたい放題がそこにあるのだ。
あと主演の野村啓介氏の演技がとにかく良くて、視聴者が本作を見て困惑するその更に上をいく困惑を物語の中で見せてくれるから普通にめちゃくちゃ面白い。これっておかしいよね?と不安にならない。野村啓介が作品内で浮かべる表情を見て我々も「だよなあ、そうなるよなあ…!」と笑顔になる。まさにキーパーソン。実は本作の心臓部は最強の悪魔達でも全てを切り刻むチェーンソーでも無く、野村啓介氏なのかもしれない。

このような劇場作品を作り出して渋谷や新宿で上映できる映画監督が日本にいることが嬉しい。