今年の"舐めてた案件"
正直、観る前は今更『オーメン』の前日譚なんて… と思っていました。良くてこれくらいって観るまでは高を括っていましたが…
今は亡きリチャード・ドナー監督が手掛けた『オーメン』1作目を最大限リスペクトしつつ、それを超えてやるという強い意志を感じる一方、近年のメジャーホラーとしては珍しいほど尖った怪作でした。
オリジナルの『オーメン』に近い禍々しい不穏な雰囲気や音響演出が多い一方で最近のホラー映画で頼られがちなジャンプスケアは少なく、ホラー映画というよりも古き良きな"オカルト映画"という印象が強いです。
まずはオープニング。
ぶっちゃけ"オーメンらしい"場面はこのオープニングだけなので1作目を思わせるところが少ないという不満の声が多いのも理解はできるけど、『オーメン』で面白いところは今回のオープニングや初代でデビッド・ワーナー演じるカメラマンが…のところなので、それをメインにした『ファイナル・デット』シリーズがもう世にある以上、あの展開が多めにすると逆に既視感バリバリになってしまうので本作の方向性は決して間違いではないと思います。
全体的なルックは70年代イタリアを舞台にしているだけあって、『サスペリア』などダリオ・アルジェント風。いわゆるマタニティホラーへの変化していく後半はロマン・ポランスキーの『ローズマリーの赤ちゃん』、修道女映画としては個人的にポール・バーホーベンの『ベネデッタ』を連想しました。
なによりも印象に残ったのは、ハッキリしたキリスト教批判要素です。
『ヴァチカンのエクソシスト』ではキリスト教の暗い歴史は悪魔のせいだと言い放ち、過去に教会が犯した残虐非道な行ないをまるで免罪しているかのように感じました。実際、アモルト神父はカトリック聖職者による無数の性的暴行をサタンのせいにしていたり…
しかし本作はキリスト教の司祭や権力者たちが犯した問題などの"黒い"部分を上手く物語に取り込んでおり、ある意味、『ヴァチカンのエクソシスト』に対するアンサーのようにも思えました。
思っていたよりもずっと良くできてきたのは嬉しい驚き。
ただし残念なところが一つ…
本来ならR指定になる描写がある本作ですが、より幅広い年層に観てもらう為なのかPG指定として公開され、とある場面で大変雑なモザイクがあること。このモザイク処理のせいで映画としての完成度を大きく下げている。これは日本版だけ仕様なのかは分かりませんが、Blu-rayや配信の際にはモザイクを削除したR-15版の公開を望みます。
それを除けば、僕は完全支持。
名作ホラー映画のリメイクやリブート、前日譚の製作が多い中、本作は飛び抜けた傑作/怪作だと思います。
アメリカ本国での評価も高いので続編製作の可能性もあるみたいですが、オーメン×シスターフッドという続編はアリ!むしろ是非とも観たいです!