Takashi

PERFECT DAYSのTakashiのレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
5.0
ほんとに素晴らしかったです。
本作は本当に映画でしかできない表現にあふれているような気がし、「映画って本当に素晴らしいな!!!」と思いました。
本当に心の底から感動しました。
私は「人間らしい生の美しさ」を描いた作品と思いました。

以下、ネタバレ含むかな。。。

平山は機械のような都会に埋没され、毎日同じことの繰り返しで生きているように見える。しかし、平山自身「変わらないなんてことがあるわけないだろう」、「今は今、今度は今度」ということを言っているように、平山はいつもちゃんと変化を感じながら丁寧に生きている人なのだと思う。
だから、変化を楽しむ平山は、毎日「木漏れ日」をフイルムで写真撮影するし、風でたなびく木に憧れるのだろう。
一方、とこところのカットで登場する「スカイツリー」。これもツリー(木)であるわけだが、都会的で人工的なスカイツリーは風でたなびくことなどない。毎日、変わらない姿で都会に君臨している。そう、変わらないのはアナログ的なものではなく、現代的な都会の方なのだ。変化がなく硬直的な存在としての都会の象徴としてスカイツリーを対比的に描いているのだと思う。

「同じことの繰り返しなんて御免だね」などと一見カッコいいことを言って生きている現代的な生き方の方が、実はいまだアナログに生きている平山のような人間よりもずっと「変化のない人工物」なのかもしれない。そう思った。

平山の家にはテレビもパソコンもスマホもない。まったくネットワークにつながっていない。しかしどうだろう。本当に平山は「孤独で誰ともつながっていない」のだろうか?

平山はネットワークにはつながっていないが、トイレで見知らぬ人と」「○×」を通じた交流をして笑顔になるし、公園で毎日会う女性と微笑みながらなんとなく通じ合っている。
アオイヤマダ(←とってもよかった!)からは黙ってほっぺにキスされちゃうし、姪っ子のニコからは愛されているし、スナックのママ(石川さゆり)からも好かれている。
SNSで匿名でなんとなくつながっている現代的な交流と、平山のアナログな交流。一体、どちらが孤独だろうか?

あと、古本屋の女性も面白い。彼女は平山が買う本にいちいちいいことを言う。「幸田文はもっと評価されるべきよね」とか。
スナックのママ(石川さゆり)も平山のことを「インテリ」と言う。
そう平山に身近な人は賢い人にあふれている。

一方、金持ちの平山の妹?は「本当にトイレ掃除なんてしているの?」などということを言うが、肝心の自分は自分の子供から全く尊敬されていないし、全く大事なことが見えていない空虚な生き方に見える。

最期の平山の表情のクローズアップは本当にすごかった。
あれは平山の日常の総括を表情で表現したのだと思った。
作業着姿で軽自動車を運転するというルーティーンの中で、平山の表情は、驚くほど変わっていく。
笑っていると思ったら泣いてる感じなり、そこから、くやしそうな表情にも変わっていく。
平山の表情が木漏れ日のように変化していて、それが本当に素晴らしかった。役所広司さん、ほんとうに感動しました。
Takashi

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