Punisher田中

プリシラのPunisher田中のレビュー・感想・評価

プリシラ(2023年製作の映画)
3.8
14歳のプリシラが出会ったのは、スーパースターのエルヴィス・プレスリーだった。
誰もが憧れる一大スターの特別な人になる。しかし、そんな体験が決してプリシラを幸せにするとは限らなかった...

初恋の終わり、結婚の終焉。
別れには時にポジティブな意味を伴う別れがある、それが正に今作で描かれる別れ。
彼の好きな服、彼の好きな髪型、彼の好きな色。全てを彼の好きな物で染めて、着飾って、そうしたことでようやく得られる1つの違和感「彼は彼でも、私は?」この違和感の描写が鑑賞側も伝わる仕掛けが巧い。
モラハラであってもどこか優しさを感じてしまうグラデーションのあるリアルなハラスメントの表現がやたらと上手かったし、プリシラの曖昧な感情がこちらに伝播してくるくらいリアルで曖昧な感情の移り変わりを表情で描くのも非常に巧みでビックリした。

エルヴィスの""家""が籠の様な役割を果たしているので家の面積が広いにしても意図的に狭く映し出しているのが効果的、だからこそ外出シーンや普遍的な外の景色が凄く映える。こちらも開放感が凄く伝わってきて良い。
このシチュエーションも相まってラストの爽快感には少し感動を覚えたのだが、エルヴィスのその後を考えてしまうとこれまた...
何はともあれ、ソフィア・コッポラ監督の持ち味が最大限に出力された作品ではあると思う。
特に今作でフェミニズムがしっかりグラデーション化しているのは、グレタ・ガーウィグとの対比としても位置付けられるし、個人的にはソフィア・コッポラ監督のフェミニズムの描き方がスッと胸に落ちる絶妙な表現をしていて、センシティブな問題提起を難なくやり遂げてしまう。
ソフィア・コッポラの表現力、やっぱ凄いの一言。