【頼る者…それを脅かす者…守ろうとする者】
※fans voice様のオンライン試写会にて鑑賞
これは"アグニエシュカ・ホランド"渾身の一作になったのではないか?
彼女が"政府に世界に抱いた怒り"みたいなものが、"白黒の映像"の中で具現化した作品なのではと感じた。
"ポーランド国境を介してスウェーデンを目指す"命かながら逃げる"シリア人一家"、そしてその道を阻むかのように一家に"嫌がらせ"をして追い出そうとする"国境警備隊"、正規のルートをなんとか辿って"難民を救おうとする活動家"、そして"国境付近に暮らす一般女性"…と"様々な視点"でこの難民問題を描いていくのだが、日本でもそうかもしれないが、世界の難民に対しての視線はかなり冷たい。政府の目や「国が脅かされるのでは?」と言う不安感から、表面上は救いたいと言う気持ちがあっても"完全には善人にはなれない"と言うのが現状だ。
作中の難民への警備隊の扱いは酷いものだが、やり方は違えど、これは世界中で起きている迫害行為なのではないかと残念ながら感じてしまった。
だが、その中でも、活動家や一般市民の中でも悲しみに暮れている人がいただけでも救いだし、"何とか道を作ってあげる人"がいただけでも救いだなと思った。
監督は、本作を作った事により、国を敵に回したと言う事になるのであろうが、そんな危険を冒してでも作りたかった本作は、
知ってほしい
そして、 忘れないでほしい
この二つの"監督の願望"が詰まった作品のような気がし、それを踏まえて「できる限りの事をしてほしい」と伝えている映画なのではと感じた。
さて私は、いざその光景を目の当たりにした時、どんな行動が取れるのだろうか?
境界より前に引き下がるか…前に出て闘うか…私達は考えなければならないと思う。