つー

52ヘルツのクジラたちのつーのレビュー・感想・評価

52ヘルツのクジラたち(2024年製作の映画)
4.4
52ヘルツのクジラ「たち」。この、「たち」という言葉がすごく大きな意味を持っている映画だった。

人間誰もが心の中に、周囲には言いたくても言えない、むしろ人に聞かせまいとしている「声なき声」を抱えていること。その声を聞いてくれる人が近くにいることは奇跡で、誰かの声を聞ける距離にいることも奇跡だということ。もし、誰かの心の叫びに気づくことができたなら、足を使って、時間を使って、その人のためにできることをしたいと思った。

しかし、仮にもし自分の声なき声に気づき助けてくれる人がいたとして、私はその人の声なき声に気づき、手を差し伸べ返すことができるだろうか。自分だけが与えてもらえて、相手には何も返せないと悔やんでしまうのではないか。そんなことを考えてしまい、貴湖と安さんの関係性を描くシーンが1番泣けてしまった。安さんの優しさ→貴湖の後悔→貴湖が愛に手を差し伸べる、と、全てが繋がっているような気がした。

毒親・DV・LGBTQ・ヤングケアラーと現代問題を多く描いた作品だったが、一つ一つのシーンが丁寧で、でも冗長さは感じず、キャストのお芝居にぐいぐいと引き込まれ、135分の上映時間があっという間だった。
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