netfilms

このハンバーガー、ピクルス忘れてる。のnetfilmsのレビュー・感想・評価

3.8
 傑作『違う惑星の変な恋人』と地続きな映画ということで当然フォローしていたのだがなる程、今作があって複雑な脚本を従えた名作『違う惑星の変な恋人』が生まれたんだと実感した。言い得て妙な深夜のテレビ東京ドラマ感は実は深夜の東京MX案件であったことが判明し、肝を冷やしたが東京MXでもテレビ東京でもドラマ班への予算の分配は殆ど大差ない。木村聡志シネマティック・ユニバースと冠された壮大な試みは『違う惑星の変な恋人』と今作が表裏の関係で、浅井健一ことベンジー(中島歩)だけがまるでドクター・ストレンジのごとく接着剤のようにマルチバースな双方の世界を行き交う。『違う惑星の変な恋人』ではむっちゃん(莉子)で、今作ではなっちゃん(森ふた葉)という心底どうでもいい記名に纏わるエトセトラだけが強調されるが、ベンジーが単なる女ったらしのクズ男であることは間違いない。

 草食系女子と草食系男子の拗らせ系集団による、完全に距離も何もかもがバグってしまった集団のなれの果てと言えば良いだろうか?恋愛下級者たちの恋愛下級者による恋愛下級者のための恋愛メソッドが享受されるのだが、明らかに彼岸の彼方から繰り広げられる男と女の禅問答のようなシュールな会話劇は正に『違う惑星の変な恋人』と地続きの木村聡志ワールドで相当可笑しい。全員が全員、痛々しいまでに距離感がバグり、観覧車で行われる会話もバーガー・ショップで行われる会話も、ついでに申し上げればアパートの一室で繰り広げられる会話劇も何もかもがシニカルに女と男の位相を半拍ずらし続ける。今作はその微妙な会話劇の間とシュールな距離感に身を委ねるのが吉なわけだが、『違う惑星の変な恋人』と比べた際には無駄なシークエンスが散らばり、玉石混交な感は否めない。然しながら2作観た時点で、東京03の飯塚のような作家主義としての見事な世界観が垣間見える。本来、コントと映画とは水と油のような相性の悪さを曝け出すのだが、今作から成長して『違う惑星の変な恋人』に至ったとすれば木村聡志の成長曲線は凄まじく、この先を黙って見守るしかない。『違う惑星の変な恋人』の澤(坂之上茜)と今作の澤(まるぴ)が姉妹だという事実には流石に唖然とした。
netfilms

netfilms