Miver2

戦雲 いくさふむのMiver2のレビュー・感想・評価

戦雲 いくさふむ(2024年製作の映画)
5.0
国防を盾にして着々と進めて行くその行いは、沖縄の島々を戦争が日常を蝕んで行く事に対してあまりにも無自覚でありながら、住民の良心や尊厳を思いっきり蔑ろにしている事に強い憤りを覚えたし、国の行いとして最低の縮図がここにあるなと思った。

‪住民達の中で様々な意見がありながら、それを受け入れると言う事は、国の良心を信じていたからだと思うし、国の良心を疑って来たからこその反対だと思うんだけど、国の行いを見ていると完全に"侵略"とか"制圧"をしれっと行ったんだなと思った。‬

‪基地が配備され、戦争出来るようにその舞台が作り上げられて行く恐ろしさが尋常じゃなかったし、戦争が日常を蝕んで行く事の異常さを実感せずにはいられなかった。‬

‪島に住む人達の語りを聞いていて、年配の人も若者も"未来への引き継ぎ"を強く意識しているからこそ、怒りを露わにしながら行動しているのだと思ったし、島で暮らす住民の方々から真っ当な保守としての姿や志を強く感じられたのがとても良かった。‬

軍事や原発や万博で権力を思う存分見せ付け続けているはずなのに、国としてはどんどん衰退させて行ってる時点で自公政権なんて全然「保守」じゃないんだよな。
(これは維新にも言える事。)‬
‪そもそも人々の暮らしの大半を「保守」出来てないじゃん。‬
‪むしろ制度を改悪したり、裏金作る事に精を出してた訳だしさ。‬

‪"保守"と言う物を考えた時に、伝統を引き継いで行く事、生活を引き継いで行く事は未来へと繋がって行く訳で。‬
‪その事にしっかりと向き合っているからこその怒りや苦しみが伝わって来たし、国として、人としての良心の無さが全てを動かして行く事の醜悪さが溢れていた。‬

‪これは絶望しかないな...と思って観ていた所に若い人達が前に出て行動するその姿を見て、先日のポリタスTVで東日本大震災を取り上げた時の津田さんがいう"希望"と青木さんが言う"絶望"がここで繋がって、言ってた事が完全に腑に落ちた。‬
‪あそことても良かったな。‬

‪しかしとある町長の姿を見ていると、完全に独裁だったし、ある種捨て駒感が滲み出ていて。‬
‪民主主義という物が機能しない異常さは、安倍政権以降の行いを改めて実感する事になるし、一つの線で繋がって行く所もあるなと思った。‬

‪もし戦争が起きた時に政府は島の人達を助けてくれないのは明白だと思ったし、東日本大震災の復興がまだこれなのかよという所と、能登の地震での放置ぶりが一つの線で繋がって行く。‬
‪安倍政権以降の政権っていかに人権や尊厳を蔑ろにしているのか?と改めて実感せずにはいられなかった。

‪沖縄で避難訓練やってた映像観て思ったけど、あんなの机上の空論でしかないし、机上の空論でしかないツッコミどころ満載感凄まじいのに、その問いもなく実行して行く政府って、よっぽど有能だと思ってるのか、単に無自覚な大馬鹿なのか、まあ後者かなと...。‬
でも多分これは両方なんだろうな。

‪終わりへと向かう所での漁師さんを捉えて行くその過程は、島で生きるからこその本来の尊厳な人権を強く感じたし、生きる事で大切な事が滲み出ていた良い場面だった。‬

‪この作品を観て行く中で、政府は平気で嘘を積み重ね続けて行く事に良心を咎めないのか?と一瞬だけ疑問に思ったけど、自民党の裏金問題の経緯を見ていると、そんなもんある訳ないわなと改めて思いましたね。‬

沖縄の空や自然は美しいのに、嘘を積み重ねて行く政府の行いの愚かさや醜さは、塚本晋也監督「野火」での自然の美しさと人間の愚かさや残酷さの対比という所で繋がって行く物があると思わずにはいられなかったし、ホー・ツーニェンの「旅館アポリア」を改めて観たいなと思った。

‪軍事や原発や万博で権力を維持したり魅せつける事は出来ても、そこにしか縋る事が出来ない愚かさを浮き彫りになっていたし、権力者達の愚かさに犠牲になるのは私達であるという事を改めて実感する素晴らしい作品だったし、何よりも不穏さや恐怖が生活を蝕んで行く事の重さや生活の空気が変わって行く事を、島の人達に丁寧に寄り添いながら捉えていたのが素晴らしい作品でした。
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