Miver2

マッチ工場の少女のMiver2のレビュー・感想・評価

マッチ工場の少女(1990年製作の映画)
4.5
カウリスマキ監督の脈々と流れ行く作家性をしっかりと体感する事が出来たし、社会情勢を取り入れながら描いて行く人間模様は時に甘くて時に苦く、容赦なく辛辣な物語が抜群に面白かった。‬

‪その当時の社会情勢を取り込んで描く物語の構造はカウリスマキ監督の最新作「枯れ葉」と同じなんだなと思ったし、現実に寄り添いながら人を描いて行く物語の味わい深さがたまらなく良かった。

‪人と人との関わりでの噛み合わなさぶりは滑稽のようでもあり、人生に於いて辛辣な現実を突き付けられて行くかのようでもあり。‬
‪物語を描く視点は優しさとユーモアを忘れずに、生きる苦さや辛辣さが容赦なく剥き出しになる瞬間に観ていて言葉がなかった...。‬

途中、主人公が喫茶店でケーキか何かを食べてる場面の音楽で物語を語り、主人公の表情を捉える画の構図が素晴らしかったな。
そして音楽を使って物語とその心情を語るあの面白さはアキ・カウリスマキ監督作品ならではの醍醐味が溢れていて、あまりにも最高過ぎた。

でも容赦ない現実が降り掛かる中でのその行いは、肝心な所を見せずにサラッと描いて魅せる素晴らしさが見事だったし、ある種映画芸術としての最高の描き方をしていたのが素晴らしかった。

やって来た物語の終わりのその光景は当然ではあるのだが、物語が始まってから終わるまで一貫して、下手に感情移入させずに登場人物に丁寧に寄り添いながら描いていたし、人を描くその距離感が絶妙だったなと。

終わってみれば非常に辛辣で容赦ない人生の一コマを観る事になったけど、現実に寄り添いながら映画を描いて行く事の面白さを体感出来て、素晴らしい作品でした。
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