Miver2

プリシラのMiver2のレビュー・感想・評価

プリシラ(2023年製作の映画)
5.0
生きる上での甘さと苦さが何処までも深く溶け合いながら、愛おしくて遣る瀬ない愛情の中で描かれて行くプリシラとエルヴィスの2人の物語が抜群に面白かった。

言葉で語り過ぎずにその立ち振る舞いや表情、画の構図や音楽を使っての2人の感情や心の揺らぎ具合をしっかりと捉えながら描かれて行く物語があまりにも最高過ぎた。

惹かれ合う中での甘さやときめきが溢れて行くあの感じがたまらなく良かったし、物語を描く中で尊厳をしっかりと踏まえながらの醜さや焦燥を丁寧に描いていたのが素晴らしかったな。

2人が出会ってからのときめきやその心の揺れ具合はとても愛おしく感じられる物だったけど、プリシラとエルヴィスの距離感が密接になればなる程その関係性を魅せ付けられて行く描き具合が容赦なかったし、そこには明らかに無自覚で優位に立つ姿から滲む物があまりにも凄まじかった。‬

尊厳をじわじわと蝕みながら、相手がある事に対してあまりにも無自覚に自分の所有物のように全てを染め上げて行くその過程に醜悪さを覚えずにはいられなかったし、"品評"で覚えるその違和感と嫌悪感は時代を超えた所で描かれていて。
正直観ていてしんどい物があったけど、2人の関係性がよく現れている素晴らしい場面だった。

愛情と孤独の狭間で鬩ぎ合い、揺れ動く姿は愛おしくもあり、遣る瀬なくもあり、愛情とやり切れなさと焦燥と心のすれ違いが積み重ねられて行く先で訪れる結末にはあまりにも遣る瀬ない物があったけど、とても心に残る物があって素晴らしかった。

プリシラとエルヴィスの関係性は身近な所で深く感じられる物があったし、描かれて行くその事柄や感情を現代社会と重ね合わせて観れた所もあって、抜群の面白さだった。

先月久し振りに「マリー・アントワネット」を観て、その素晴らしさを実感出来たけど、ソフィア・コッポラ監督の物語を描く中での一貫した作家性とその世界観を存分に楽しむ事が出来て、素晴らしい作品でした。
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