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パラダイムのnetfilmsのレビュー・感想・評価

パラダイム(1987年製作の映画)
3.8
 アメリカ・ロサンゼルス、貧民街のそばにひっそりとそびえ立つカールトン教会。老司教は腹の上に大事そうに宝箱を抱えたまま、絶命する。眩く光る満月の夜、「眠りの兄弟へ 私は警告する」というメッセージを残して。聖ゴダール協会では、司祭(ドナルド・プレザンス)が緑色に輝く半透明の柩を発見する。一方その頃、カリフォルニアにある科学系の大学では、今日もハワード・バイラック教授(ヴィクター・ウォン)の講義が始まる。口髭を蓄えたブライアン・マーシュ(ジェームソン・パーカー)は、同じゼミのキャサリン・ダンフォース(リサ・ブロント)に恋をしている。友人のウォルター(デニス・ダン)の紹介でキャサリンと知り合えたブライアンは恋に落ちる。不可思議な緑の液体のことが気にかかり、司祭はバイラック教授に指示を仰いでいた。教授はブライアンら学生たちを泊まり込みで、緑の液体の研究に当てる。

 満月の夜、不気味に光る教会の様子は、『ジョン・カーペンターの要塞警察』の9分署と同工異曲の様相を呈す。何も言わぬゾンビのような人々は、こちら側の様子をずっと見つめたまま、動こうとしない。科学と宗教に踏み込んだ量子力学を取り込んだホラー映画は、何かが起こる気配だけを讃えながら、はっきりと事態が動くことがない。この閉所空間に集められた優秀な生徒たちは、1人ずつに分断された時に次々に犠牲になる。彼らの死に様はそれぞれ悲惨なのだが、肝心要の設定そのものは、液体を媒介にして疫病のように次々に感染していく。前作『ゴースト・ハンターズ』で大活躍だったデニス・ダンがここでは絶体絶命のピンチに陥るお調子者を嬉々として演じている。思わせぶりにシリアスなドナルド・プレザンスの『ハロウィン』を超えた司教ぶりも見ものだが、今作のジワジワ来る侵犯的な怖さは他に類を見ない。クローネンバーグの『ヴィデオドローム』のようなサタンとの邂逅、夢にしか侵入出来ない黒い影の恐怖は、女性を向こうの世界に幽閉する。
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