柊渚

ウィンターズ・ボーンの柊渚のレビュー・感想・評価

ウィンターズ・ボーン(2010年製作の映画)
3.8
「家族のために少女は大人になるしかなかった」

心を病んだ母親と幼い弟妹を支える極貧の17歳の少女リー。ある日、父親が自宅を保釈金の担保に入れ失踪したことで、家を失う危機に陥る。少女は父親を探し始めるが、同時にとある「秘密」と向き合わなければいけなくなる。


アメリカ南部の貧困地域が舞台となっているのですが、そこでの人々はみな自給自足に近い貧しい生活を強いられ、小屋やトレーラーハウスなどに住んでいる。閉鎖的なコミュニティにおいて何の意味も為さない国家の法と法よりも重視される独特の掟。犯罪と暴力の中に生きる人々。
とてもじゃないけど現代アメリカが舞台とは思えなくて、ひどくカルチャーショックを受けました。

また17歳という若さで軍隊への入隊を志願し家族の生計を立てようとするなど、過酷な環境の中で貧しさや暴力に負けずに生きようとする少女の姿は非常に逞しいのですが、その気丈さが少し寂しかったです。
笑顔も見せない。涙も見せない。ひたすら唇をぎゅっと噛み締め、睨むように前だけを見据えてる。ジェニファー・ローレンスの力強く自然な演技に惹き付けられる。


これは少女の成長物語でもあるわけですが、
彼女の場合は大人にならざるをえなかったというのがほんと悲しくて切ない…( ;∀;)
そして最後は少女と一緒に「秘密」を共有したような複雑な気分に陥る。

とても重たく陰鬱で、まさに夢も希望もない物語ではありましたが、少女の中にある芯の強さがせめてもの救いだったかなと思います。

でも闇は永遠の冬に閉ざされたまま。
柊渚

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