柊渚

オール・ザット・ジャズの柊渚のレビュー・感想・評価

オール・ザット・ジャズ(1979年製作の映画)
3.5
舞台の上で生き、舞台の上で死ぬ。
ボブ・フォッシー監督の自伝的映画。
仕事を愛し酒もタバコも女性関係もやりたい放題やってきた天才演出家の男が、「死」に直面することで、薄れゆく意識のなか自身の人生をミュージカルのように振り返る。
それはまるで長い長い走馬灯。


なんだかすごいもの見ちゃったよ感がすごい映画でした…(語彙力)
ミュージカル映画(と言ってもいいのかな?)自体あまり観たことがないのですが、全編に散りばめられたダンサー達のパフォーマンスにはとにかく圧倒されっぱなし。作業ついでになんとなく観始めた映画だったのに、作業する手はいつの間にか止まっちゃってました…(・∀・;)アア…

これはボブ・フォッシー監督自身を投影した、いわば監督の分身でもある主人公ジョー・ギデオンが「生」に執着しながらも「死」という最期の舞台に緩やかに辿りつく物語。
「死」に対しては楽観的な感情と悲観的な感情が同時に描かれ、夢と現実の狭間でぐちゃぐちゃになりつつも多重的な死生観が展開されていく。

「Bye Bye Life (バイバイ、私の人生)」という曲を主人公が歌い終えた時は思わずしんみり。
祭りが終わった後の静けさのようなものを部屋の中で感じていました。


人間死ぬときは誰しもが一人。
だけど、もしも主人公が立った最期の舞台にいつか自分も立つとき、一体誰が観客席に座ってくれているんだろう…。
また自分は誰に傍にいてほしいと願うのだろうか…と考えました。
何度も観たくなるような作品ではなかったけれど、「死」が近づいてきたその時にもう一度観たくなるのかなと思います。
柊渚

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