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ティファニーで朝食をのKuutaのレビュー・感想・評価

ティファニーで朝食を(1961年製作の映画)
3.7
早朝のニューヨーク、タクシーから降りるのは黒いドレスに身を包んだオードリーヘップバーン。手に持った素朴なパンとコーヒーの、ティファニーのショーウィンドウとの対比が効いている。思わず息を飲む滑り出し(タクシーを降りた先で…という展開はエンディングともリンクしている)。

ただオープニングやエンディングの鮮やかさとは対照的に、中盤のパーティーやコメディタッチな演出など、冗長、凡庸な場面もあり、シーン毎のムラが大きかった印象で評価が難しい。

ダイヤを望んでいないのにお金を求め彷徨う。矛盾でいっぱいで満たされない偽物。宝石店には「不幸がない」と言い切る。名前のない野良猫と、猫に餌を与えるネズミ。似た者同士の男女が惹かれ合う。

基本的に幻想的なラブロマンスなんだけど、その影にはゾッとするほど冷たい人間社会が横たわっていて、彼女の性格上、いつそっちに落ちていくかは分からない。それでもいま目の前にいる人を信じて結ばれる。キリンジの「Drifter」(=漂流者)にもムーンリバーが出てきますが、自分の脆さを自覚しながら世界の片隅で手を取りあって生きようとする話なんだろうなと。

そういう清濁併せ呑むようなテーマを秘めているはずなのに、オードリーのイメージとコールガールで生計を立てるホリーというキャラがイマイチ噛み合ってなくて、オードリーの美しさだけがぼんやりと浮き上がっているような。狙ったわけではないのだろうけれど、このアンバランスなフィクション感は今作の魅力な気がする。73点。
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