Kuuta

上海から来た女のKuutaのレビュー・感想・評価

上海から来た女(1947年製作の映画)
3.7
サメの群れが自分の血に興奮して共喰いする、というエピソードを軸に、全員が泥沼にハマっていく。市民ケーンでやりすぎたウェルズは編集権を奪われており、オリジナルの155分が87分に短縮されている。制作経緯に重なる「切り貼り」は今作のキーワードに思える。

ミラーハウスで多面的な人間像が拳銃でガンガン撃ち抜かれる。ノワールの古典でありながら、表現主義じみた終盤の遊園地から、ワニや蛇を見せ物にする観光映画の顔まで持つ目まぐるしい映画。リタヘイワースの正対のドアップ(綺麗なんだけど冷たい)をウェルズは斜めから見上げ、全体を引きで捉えるカメラは俯瞰気味。殴る場面は早回し?自由に漫画みたいに繋いでいる。

法廷シーンの本筋に絡まないくしゃみや雑談。水族館では、ウェルズとリタヘイワースの不倫話の後ろで、別撮りの巨大な魚の映像が水槽に嵌め込まれている。幽霊のように背景でじっと2人を見つめる男もいる。演劇中の目線の交差が「誰もが無数の角度から解釈される道化である」という締めのセリフへと導いている。前半のカリブの島巡りシーンがちょっと眠かった。
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