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浮き雲のpsychocandyのレビュー・感想・評価

浮き雲(1996年製作の映画)
3.8
フィンランドの映画作家アキ・カウリスマキ監督作の初鑑賞。

本作は同監督作品の「敗者三部作」の第1作目と位置付けられているものだそう。ストーリーとしては、中年夫婦がそれぞれ失業することになってしまい、何とか生活を立て直そうと職を捜すものの、なかなかうまくいかず、社会の厳しさの中でもがく姿を描いたもの。

そんな暗くて哀しいお話ではあるのですが、作品全編で悲壮感が漂っているというわけではありません。セリフは少ないですし、役者の皆さんの表情もそれ以上に乏しいのですが、この意図的な「情緒感のなさ」が逆に滑稽ですらあって、ユーモアさえ感じさせます。ジム・ジャームッシュ監督や北野 武監督の作品にも通じる独特の作風。「冷めている」のにどこか「あったかい」。何とも不思議な空気感です。なるほど、これは癖になりそうですし、熱心なファンが多いのも納得です。

引退を撤回して6年ぶりに発表した最新作「枯れ葉」も面白そうですし、過去作品も全然観れていないので、これから少しずつ観ていきたいです。
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