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ポストマン・ブルースのMelkoのレビュー・感想・評価

ポストマン・ブルース(1997年製作の映画)
3.8
「過去はもう存在しないし、未来はまだ存在しない。私には、明日の約束なんてできないから。今日できること、明日に持ち越したりなんかしないの」

「お前の中の殺し屋を、ぶっ殺してやる」
「撃って」

「あの子にはお前しかいないんだ。しっかり守ってやれよ?」

弾丸ランナーぶりのSABU監督
空虚な瞳、ストレスで爆発寸前の郵便局員 沢木
ひょんなことから沢木と知り合う女性 末期がんで身寄りのない小夜子
同じく末期がんの殺し屋 ジョー
沢木の高校時代の友人でヤクザの野口
……その他、周りでわちゃわちゃやってる奴ら(主に警察)

SABU作品も、常連な役者が出てることで有名か
役者の違う役での演技が楽しめる
「弾丸ランナー」でヤクザのボスと子分を演じた堤真一&大杉漣コンビの、郵便局員&殺し屋という摩訶不思議な配役と絡み

チラッとあらすじだけ読むと、なんじゃそりゃ?なんだけど、見てみると、なるほど、見てる側を納得させる物語運びとなっている。さすがSABU監督
警察に何か恨みでもあるのか?バカバカしいほど無能に描かれる警察 杜撰な捜査に激しい思い込み
こんなことリアルにあったらたまったもんじゃない
アンジャッシュのコント並みに積み重ねられた勘違いの果てに、警察から全国指名手配される沢木

終盤、沢木、ジョー、野口の3人がチャリで爆走するシーンは、同じく男3人が爆走した弾丸ランナーを思い起こさせる
沢木を守ろうとするジョーと野口
いやいや、元はと言えばあんた達のせいで沢木こんなことに…と特大のツッコミを入れたくなったけども。
オッサン3人が必死にチャリ漕ぐ姿があんなに爽やかに見えるとは。
野口とジョーに挟まれてちょっと嬉しそうな沢木

競輪の元オリンピック代表選手をも凌駕する、恋の力
しかしながらそれは、男女の恋愛の枠を飛び越えて、人から真に頼られる喜びと達成感を沢木が感じ取り、力にできたからに他ならない

ストレスに押しつぶされてやる気のない序盤から、小夜子と出会い交流することで、段々と活力を激らせ、想いを込めてチャリを漕ぐ沢木を演じた堤真一、凄かった。
33歳の設定の沢木、年齢的にも等身大を演じていたのか。コミカルもシリアスも、真に迫る演技だった。

大杉漣の安定感は半端なかった。

なんてハードボイルドでファンタジーで切なくて愛しいラストシーンなんだ。
周りは皆モブなんだ。2人の世界
こんなにお互いを想い合える関係性、羨ましくて微笑ましい

恋愛映画も撮れるのね、SABU監督
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