Melko

アメリカン・ビューティーのMelkoのレビュー・感想・評価

アメリカン・ビューティー(1999年製作の映画)
3.7
”You don't get to tell me what to do ever again.(僕に、ああしろこうしろと、2度と、言うな)”

”How are you?”
”God, it's been a long time since anybody asked me that... I'm great.”

地上波放送を見てる途中で「なんだこの映画、気持ち悪…」と途中離脱。それ以来ぶりの鑑賞。この作品が地上波で放送されてた頃だから、もう15年以上前。長いことかかったなぁ。

家族なのに、なんでこんなに分かり合えないのか
家族だから、腹を割って話せず見栄を張ってすれ違ってばかりなのか
内容はやっぱり気持ち悪かったけど、でも「なんて日だ!だね、パパ…」と思わず泣きながらツッコミたくなるぐらい、奇妙な切なさが残った。

仕事への燃える情熱は、日々をこなすうちに忘れてしまい
家族への愛情は、お互いが歳を重ねて見える世界や思いが変わってくるごとに色褪せて
自分への自信は、そんな変わってしまった家族の誰からも関心を受けないことで消え失せてしまった

色々なタイプのダメ人間が大集合
濃いメンツの悲喜交々、俯瞰で見れば他人事
でも、自分には起こらないと言えるか?いや、誰だってそうなりえる
・ピチピチギャルに欲情するダメオヤジ
・向上心が強い割に打たれ弱すぎるダメオカン
・文句を言うことしかできない世間知らずなダメ娘
・盗撮が趣味の性格が歪んだ隣家の息子
・ゲイを毛嫌いする、隣家のオヤジ
・存在感を消している隣家のオカン
・平凡を嫌いビッチであることを誇るギャル

主人公である欲情ダメオヤジの家は、家族それぞれが自分を変えようとした結果、明後日の方向に爆走してしまい、家庭崩壊寸前で悲惨だけど、より悲惨なのは隣家。もう家族としてのちゃんとした会話すらない。
男らしさを誇示することしか脳のない父、死んでるかのように存在感のない母、何を考えてるのか本心がわからない息子。
家族として全く機能していないように見えて、背筋が凍る。恐ろしすぎる。

出来事のボタンが少しずつ少しずつ掛け違えられていく。
吹っ切れた父親は暴走してるかのように見えて、実は一番ちゃんと自分の人生と自分の家族に向き合っていた。ただ、気づくのが遅すぎた…

ケビン・スペイシーはホントこういう「くたびれ暴走野郎」がよく似合う。くたびれてるのに暴走するっていう矛盾をちゃんと表現できてるし、終盤、ギャルを前にして娘のことを聞くシーンの表情は凄い。そして、ギャルとのアバンチュールを想像したり、セックスレスの妻に迫るシーンは、しっかりキモイ。笑
てかケビン・スペイシーの1人語りを映画で結構見る気がするのは、私だけ?

ソーラ・バーチもミーナ・スバーリもしっかり身体を張っていて凄い。やらされ仕事でなければ良いのだけど、、
あと何気に隣家のオヤジのまさかの終盤あの表情には驚いた。振れ幅〜、俳優さんってすごい。アレって、オヤジもホントはそっち側の人間だったってことだよね。。南無

作品として好きかと言われると、いや、、ただ、反面教師としてみんな見たほうが良いかもねって思った。
これからの人生をより良く生きていくために…きっと今ならまだ遅くないから…
Melko

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