psychocandy

チャイニーズ・ブッキーを殺した男のpsychocandyのレビュー・感想・評価

4.0
ジョン・カサヴェテス監督作品。

物語は、場末のクラブオーナーがギャンブルで大負けし、その借金返済の代わりに、マフィアのボスの殺害を依頼され、それに加担していく…、というもの。いわゆる「クライム・ムービー」の体裁とはなっていますが、本作は、そんなノワール的な要素は少なくて、クラブのオーナーである主人公コズモ(ベン・ギャザラ)と、彼がまるで自らの家族のように愛情を注ぐ従業員たちの「家族(的)愛」を描いた作品、という感じ。

とにかく、このコズモという男が全くもってダメダメなんですけど、どこか憎めないオヤジで、店への半端ない思い入れと親心的な従業員への愛情がひしひしと伝わってきて、つい肩入れしたくなってしまいます。それはまるで、下町のちっぽけな工場で、家族ぐるみの付き合いのある従業員たちの生活を懸命に支えようと一人奮闘する中小企業社長の悲哀、といった感じ。ちょっと薄くなりつつある頭部の具合(失礼)も含めて、ベン・ギャザラの演技が素晴らしくて、まさにハマり役。

マフィアとのドンパチもハラハラドキドキのサスペンス要素もほとんど皆無ですが、その裏に見え隠れする本作に込めたジョン・カサヴェテス監督の想いが凄く伝わってきて、個人的には堪らない作品でした。(もちろん、カサヴェテス作品らしく、映像のカッコ良さは折り紙付きです。)

歳のせいか、近頃この手の作品(枯れてゆくオヤジたちの悲哀物語)にめっぽう弱くなってきた気がします。切ない…。
psychocandy

psychocandy