netfilms

弓のnetfilmsのレビュー・感想・評価

(2005年製作の映画)
3.4
 初老の男は弓矢を持ちながら、弦輪に糸を引っ掛ける。上弦と下弦の張りに気を配り、中仕掛けのところにゆっくりと堤を差し入れる。仏様の絵の前で男は、女の左繭尻にそれぞれ赤、緑、黄色で一箇所ずつ彩る。映画はこの2人だけの儀式で厳かに始まる。波の流れが穏やかな海の上では、客人たちが釣りをしている。その船上にはひと際目を引く若い女性の姿がある。釣り人たちが鼻の下を伸ばし、彼女にセクハラしようものなら、警告だと言わんばかりにすぐ矢が飛んで来る。若い女性は初老の男の娘ではない。6歳の頃に連れて来られ、もう10年間ずっと船の上で生活しているという。初老の男と若い女の間に会話らしい会話は一切ない。しかし年頃の女はひときわ目を引く美人で、天性のファム・ファタールのような色気を醸し出す。この若い女を『サマリア』でチェヨンを演じたハン・ヨルムがしたたかに演じている。

 老人は彼女の17歳の誕生日に籍を入れようと決め、その日が来るまで少女に変な虫が付かないように監視していた。老人は彼女の父親のように振る舞いながら、それと当時に彼女の夫にもなろうとアンビバレントな感情を有しているし、彼がした行為は人さらいであり、明らかな犯罪行為である。『悪い男』のハンギや『うつせみ』のテソクのように、キム・ギドク映画の男たちは女のすぐそばで彼女の姿をじっと監視している。だが『サマリア』のヨジンの父ヨンギのように、疑父の偽りの振る舞いはやがて白日の下に曝されねばならない。ある日父親とこの船に釣りで乗船した若い男(ソ・ジソク)は、2人の関係性に疑義を持ち、幽閉された水上の狭い部屋から少女を陸に連れ出そうと目論むのだ。当たると好評の占いが皮肉にも2人の運命を変え、仮初めの儀式の後、2人がそこにいた面影だけを残しながら船はその姿を消していく。『春夏秋冬そして春』以来の寓話的で神秘的な物語である。
netfilms

netfilms