矢崎

十二人の怒れる男の矢崎のレビュー・感想・評価

十二人の怒れる男(1957年製作の映画)
5.0
かなり昔の作品だけれど、テンポ良く進む会話と無駄のないカメラワークでとても見やすい

似た様な格好の中年男性が集まり話す白黒映画という個人的に不安のある状況だが、どのシーンも表情や視線の動きがしっかり映してあるので混乱せず観れた
白黒だからより白目が際立って目力を感じたのかもしれない

いかにもな境遇の少年が「らしい」事件を起こしたという議論の余地すらない有罪ムードの中でただ1人議論の必要性を訴える男性が、別に被疑者の無罪を確信しているわけではないというのが面白い

あくまで証拠や証言に矛盾がないかを検証したいという真摯な訴えと絶妙な進行により、議論を拒む人たちを壇上へ上げ、感情で支配されそうな空気を納め、乱暴な口調に毅然とした態度で返し、ヘイトスピーチを躱し、場を掌握する…これがディベートが上手いということか…!
要所での余裕を感じさせる振る舞いといい、発言内容そのものだけではなく「どう話すか」が重要ということは現代にも通じることで勉強になる

議論が進むにしたがい、各人の職業や境遇などに結びついた意見交換が生まれるところも良い
接点も利害関係もない人間同士だからこそ交わされる会話であり、集ったメンバーが彼らだったから生まれる時間には、陪審員という制度の理想系を見るとともに一期一会の美しさを感じた

しばらく配信がなくBlu-rayを購入したが映像特典の解説がとても良かった
最近はアマプラでも観れるようになり本当に嬉しい限り
矢崎

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