矢崎

シェイプ・オブ・ウォーターの矢崎のレビュー・感想・評価

5.0
冷戦下のアメリカということで常にどんよりとした不穏さが漂っていてとても良い

アマゾンの奥地で神として敬われていた生物は捕らえられ、運ばれた先のアメリカで研究用として粗雑に扱われる

商品パッケージ用の絵画を手がけるなど画家として生計を立てていた気の良い老人は、写真の普及によりもう絵の時代ではないと門前払いされる(そしてゲイということで街では蔑まれ嫌われ続ける)

憎まれ役の軍人は職場でこそ横暴だけれど、上からは謎生物をうまく使って結果を出せとせっつかれ、結果として失敗する
郊外の新居に若くて可愛いちょっと軽率な妻と幼い子どもが待っていて次は高級車を買おうかという姿は、そうあるべしとされた理想の成功者像をなぞるばかりで側からみると空虚でしかない

明日が今日より良くなると期待できそうもない社会の中、どこへも行けない人たちの姿が辛い
多大な犠牲を出しながら女性と半魚人は手に手を取り合ったけれど、その後ろに残された人たちは明日からをどう生きて行くのだろうかと考えるとなんとも後味が悪くていい
矢崎

矢崎