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野獣死すべしのarchのレビュー・感想・評価

野獣死すべし(1959年製作の映画)
3.3
相変わらず仲代達也の発声が素晴らしくて、メロメロになってしまう。

表の顔と裏の顔を使い分けるエリート殺人鬼の映画で、『アメリカン・サイコ』なんかも連想させる作品。
表では優秀な教授助手、裏では女学生を妊娠させ、BARでおばあちゃんを見世物にし、厭世的かつ腐敗した日本へと憎悪に染まった人物が、そのままなんの客観的な意見との衝突もなくアメリカにExitする物語に衝撃を受けた。
進歩がなく、未来の見えない日本への警鐘としての仮想敵が
仲代達矢によって魅力的で正論らしく描かれていて、彼の行うことには何かしらの「真実」を突いているのではという錯覚があるし、その証左のように警察機関は無力で、誰も彼を止められない。


未だに彼を捕まえようとセフレの女を追う刑事と飛行機で肉をほうばる伊達のラストは、既に戻ってくるつもりがないだろう伊達(日本では捕まえられない)の逮捕のために頑張ってる空回りした警察の滑稽さを描いているのか、それともまだ伊達の破滅を予感させているのか。ちょっと分からなかったのだが、やっぱ後者なのかなぁ。
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