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ジャングル・フィーバーのnetfilmsのレビュー・感想・評価

ジャングル・フィーバー(1991年製作の映画)
4.0
 ニューヨーク、ハーレム。アパートの上ではもう新婚でもない夫婦が夜通し愛し合っていた。一人娘のミングは物音を感じながら、ケラケラ笑う。翌朝、フリッパー・パリフィ(ウェズリー・スナイプス)は娘を幼稚園に連れて行き、いつものように出勤する。建築家として白人オーナーの会社を盛り立てるフリッパーは出世欲が強く、残業続きの毎日を仕事人間として無我夢中で働いていた。その日、会社はフリッパーの秘書としてアンジェラ(アンジー)・トゥッチ(アナベラ・シオラ)を雇う。アフリカ系アメリカ人を希望していたフリッパーは会社の決定に怒り狂う。フリッパーは腕利きの建築家として会社を支えていたが、一人だけの黒人として、会社に居心地の悪さを感じていた。愛する妻と一人娘に囲まれ、何不自由なく暮らしていたフリッパーに訪れた突然の転機。一方その頃、アンジーも派遣会社に雇われ、新しい生活が始まろうとしていた。2人の兄と父親との4人暮らし、アンジーは母親代わりとして家事も卒なくこなす。イタリア系の父子3人の構図は真っ先に『ドゥ・ザ・ライト・シング』を想起させる。

 雇われ建築家と秘書、2人の許されぬ愛は不倫であるという事実よりも、肌の色に縛られる。カトリックの家に生まれ、8年間厳格なカトリック教育を受けて育ったアンジーに対し、フリッパーの父親ドクター・パリフィ(オジー・デイヴィス)はかつてバプティストのリーダーだった。だがフリッパーの兄ゲイター(サミュエル・L・ジャクソン)は麻薬中毒で、実家を勘当されている。ヤク中の兄貴とエリートの弟の対比。だが出来の良かったはずの弟も、あろうことか白人女性と不貞を働いてしまう。妻に白人とクォーターの黒人を選び、白い肌に憧れる男は図らずも白人を愛し、黒人の心の檻から抜け出そうとする。建築会社を辞め、離婚覚悟でアンジーと暮らす2人の部屋はどこか殺風景で冷たい。その部屋の風景が暗示するように、2人の束の間の幸せはそう長くは続かない。バプティストのリーダーを失脚した父親の病巣、アヘンの巣窟となる貧民街を抜け出せない兄と、アップタウンの生活を出世欲で抜け出そうとした弟の挫折。アンジーが助けを求めたポーリー・カーボーン(ジョン・タトゥーロ)は皮肉にも、アンジーとフリッパーの恋人関係と位相を変える。黒人と白人、成功と挫折、愛と死の黙示録。Stevie Wonderのメロディがそれぞれの心に響き渡る。
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