ぷかしりまる

蟻の兵隊のぷかしりまるのレビュー・感想・評価

蟻の兵隊(2005年製作の映画)
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記録わすれ。まじめな奥崎謙三みたいなレビューを読んでから観たかった作品。奥村氏は自らの残留について裁判を起こし、証拠を公的文書から集め、当時を知る中国の人々と言葉を交わす点で真摯。

中国訪問は裁判の証拠集めなのか、懐かしの旅なのか一貫性がない、という趣旨のレビューがあったが、自身の被害と加害の両面における事実の再体験と位置付けられると感じた。
戦後中国での残留経験。日本軍の命令で奥村氏らは残ったのにもかかわらず、自発的なものとみなされ、帰国後に補償を受けられない。残留軍の告発は、日本はポツダム宣言後に武装解除したという建前と異なる。残留軍が「天皇陛下の為に」共産党軍と戦っている間、A級戦犯の上官は偽名を使って帰国していた。戦争のツケは下っ端が払うこと。ぷはランボーが好きなので何かにつけて思い出される。普仏戦争批判の詩、le mal(悪)より引用

Tandis que les crachats rouges de la mitraille
Sifflent tout le jour par l’infini du ciel bleu ;
Qu’écarlates ou verts, près du Roi qui les raille,
Croulent les bataillons en masse dans le feu ;

機関銃の赤い痰が鋭い音を立てるとき
一日中、青く限りない空の下
真紅、緑の軍隊が彼らを嘲笑う王のそばで
砲火の中ひと塊に崩壊する

兵士は敵味方関係なく、ひとりの人間ではなく塊として扱われていること、それを嘲笑い踏み躙る権力者、というランボーの視点は凄い。そしてこの映画も同様だった。一般の兵士は蟻の兵隊に過ぎない。

実的刺突のことなど、加害については、「日本鬼子」と比べるとあっさりとした印象。奥村さんが強姦の見張り役をしていた記憶を思い出したことについて「わたし自身しなかったが、わたしがしなかったからよいではなく、日本軍のそのような体制が問題」という言葉を覚えている。また自分の殺害に正当性を見出そうとするシーンが印象に残る。