萩原くわがた

悪い子バビー/アブノーマルの萩原くわがたのレビュー・感想・評価

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地獄も地獄な環境で大人になったバビー。倫理も道徳も知識も無く、このまま地獄の底まで落ちていくしかないと思われた彼が、とある出来事で外の世界を知り、社会を浴び、人間と会話し、様々な『関係性』を生む。そんなバビーに周囲が影響を受けていく様子がすごく良い。

地獄環境描写の地獄度がかなり半端ない。毒親というレベルをはるかに超越した実の母親から人間扱いされず、食事、排泄などの行動から知識、認識、常識までもまともではなく、呼吸をするように性暴力とモラルハラスメントの連打を浴びて、もはや人間の行いには到底見えない領域に達してしまっている。見るも悍ましい醜さ…
そんな彼が地獄から抜け出すシーンは嬉しいことではあるんだけど、今までがあんまりもあんまりだったため手放しには喜ぶことができないほど。
本当にこんな描写を見せられた後でまともに物語が紡がれるのか?と普通に心配になりながら座席に座って見てました。

しかし意外にも、まさかの方向から快感のツボをつく演出に驚かされる。ラストに進むにつれて脳細胞がバキバキに踊り出す感覚。なんて見事な作劇!!!と膝を打つような気持ちよさ。


人間が関係性を育むために会話をし、その上で相手に合わせたり環境をより良くしていくために変化していく姿の美しさ。
“手遅れ”という概念や育ちの違いなんかどうでも良くなるくらいのエネルギーに満ちていて大好き。他人のことを考える素敵さ。

地獄をしっかり描くからこそ、そこから這い上がる瞬間の美しさが強く輝く。