大道幸之丞

静かなる叫びの大道幸之丞のネタバレレビュー・内容・結末

静かなる叫び(2009年製作の映画)
2.5

このレビューはネタバレを含みます

1989年にモントリオール理工科大学で実際に起った抗フェミニスト思想の男性が起こした銃乱射事件を、生還した女子学生ヴァレリーを中心に描いてゆく。

ヴィルヌーブは「これは大切な事で、決して本事件を「客観的」に「部外者」としては観させてはいけない」と考えた結果、生身の一個人の視点にしたのかもしれない。

ヴィルヌーブ2009年の作品だが、撮り方はドキュメンタリータッチであり2013年の『複製された男』まで、この監督はジャーナリストの視点で、好んでドキュメンタリー的に撮影するタイプの監督であった事がわかる。

本作もドラマチックな展開は皆無で、冒頭で銃撃から始まってしまうので、「どう発生するのか」の経緯だけを視聴者は追うことになる。

ただし察するところ本事件に対するヴィルヌーブの誠実が厳粛を生じさせこのエピソードを過剰に脚色させ得なかったのかもしれない。

エンドロールで当時の関係者・学校関係者へ捧げる旨のコメントが出るので、自身の故郷で起こったこの事件を風化させてはならないと案外正義感と義憤に駆られて制作したのかもしれない。

登場人物も特に深く掘り下げておらず、この時代の女性は「寿退社」してしまうと思われ採用率が低かった事、そんな背景もありフェミニストの活動が盛んになったのかもしれない。ただし本作中ではフェミニスト活動が活発になっているような描写はない。

視聴する場合は過度な期待を持たず「1989年に日本人の我々が知らぬところで起こった事件」を学習する姿勢で観るのがよいと思う。

意図的にその時代のロック(ソフトセル、メン・ウィズアウト・ハッツなど)を流して視聴者も当事者的に観られるようにしているところはラースフォントリアーと同じ手法だ。