Keigo

野獣死すべしのKeigoのレビュー・感想・評価

野獣死すべし(1980年製作の映画)
4.3
松田優作という名前こそ知ってはいたものの、出演作をちゃんと観たことがなく、先日鈴木清順監督の『陽炎座』で初めて動いている松田優作をしっかり観た。そのコメント欄にてJTKさんから松田優作の他の出演作品について教えていただき、中でもJTKさんのイチオシだったこちらを鑑賞。

…す、すげえ。
なんじゃこりゃ…
あ、なんじゃこりゃとか言わない方がいいか、ややこしいし。

とにかく松田優作に、ただただ圧倒されてしまった。こんなにすごい役者だったんだ…確かにこれがやれちゃう俳優なら『陽炎座』の演技はだいぶ抑えた感じに見えるかもしれない。

決して小さくは無い顔、あの髪型と顔面、スラッと伸びた長い手足、その全身のバランスとあの佇まい…ただ美しいとかカッコイイというのとも違う、独特な存在の雰囲気…それはオーラとでもいうのか、常に醸し出されている“何か”。言語化が難しいこの“何か”こそが、優れた俳優にとって何よりも必要な要素なのかもしれないとさえ思う。

若かりし鹿賀丈史のあのアツいバカな感じもめちゃくちゃ良かったし、刑事役の室田日出男も素晴らしかった。小林麻美という人も昔の美人というより今の感覚で見てもとても綺麗な人だった。松田優作以外のキャストも皆味があって良い。

痺れるようなシーンがいくつもあったけど、やっぱり電車の車内での刑事とのやり取りのシーンなんてもう…凄すぎて鳥肌が立った。

作品としてもめちゃくちゃ面白くて、一筋縄では理解出来ない難解さも咀嚼しがいがあって良い。内容は違えど、社会が、あるいは人間の業が生み出した狂気という意味ではホアキン・フェニックスの『ジョーカー』と似た雰囲気を感じたし、役への没入感という意味でもホアキンと松田優作にどことなく共通する狂気を感じた。

こうやって邦画の名作を観る度に、自分が知らなかっただけなんだよなとつくづく思う。たいした根拠もなくおしなべて邦画を見下げるようなレベルは、どうやら抜けられたらしい。字幕を読む必要がない時点で、洋画よりも映し出されるものをより堪能することが出来るわけだし、もっと邦画も観ていきたいと改めて思った。


GEOレンタル 8/18
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