Keigo

MのKeigoのレビュー・感想・評価

M(1931年製作の映画)
3.8
この名作の香りがプンプンする印象的なキーヴィジュアルがずっと気になってたフリッツ・ラングの『M』を、ビクトル・エリセの過去作レンタルついでにチョイス。

はじめてのフリッツ・ラング。
骨太〜〜!!!

何より驚いたのはそのまんま現代に通ずる内容だったこと。一世紀近く経っても結局、人間の本質的な部分は変わらないんだなと。SNSで法に関係なく人が吊し上げられる現代と何ら変わらない。そこを抉り出すフリッツ・ラングの慧眼。

本作には製作段階では別の仮題が付けられていたらしい。それは「Mörder unter uns」(我々の中にいる殺人者)というもの。

もちろん "市民に紛れた犯人" という意味でも取れるけど、二重で別の意味にも取れる。序盤で怪しい人物を犯人と決めつけて暴徒と化す市民の様子や、終盤の集団での吊し上げの様子を見ると、"私刑に走る群衆" を指すものとも思える。

この時代の作品が勧善懲悪の娯楽サスペンスに終始せず、骨太な社会派作品に仕上がっていることに驚いた。

緩急のリズムというか作品の波長と自分の感覚がピタッと来たような感じは無くて、多少冗長に感じる部分も無くはなかったものの、「おお!この時代からこれを…」と唸らされる演出も随所にあった。

さすがはフリッツ・ラング。何度もその名前を目にしてきただけのことはある。次は『メトロポリス』を観たい。配信にもレンタルにも無いけど…
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