Melko

ミヨリの森のMelkoのレビュー・感想・評価

ミヨリの森(2007年製作の映画)
3.7
良かったけど、色々気になると言うか惜しい作品。
自然への敬意、姿なき者への畏敬の念、周囲の人との関わりや、自己の確立など、大自然の中でのびのびと暮らすからこそ備わってくるわかりやすいメッセージは良い。
絵は緩めだが自然の描写は、元は民放枠の2時間アニメとはいえなかなか頑張ってる気がするし、何よりも声優陣の奮闘が素晴らしい。

惜しむらくは、テンポの悪さ。
ゴールデン枠の2時間アニメをまとめたものなので、不自然なブラックアウトが目立ち、声優たちのセリフの間も気になる。(演技力の問題ではなく)
前半はトトロ
後半は千と千尋+平成たぬき合戦ぽんぽこ
のようにクッキリ分かれてはいるが、必要だから入れているであろう数々のエピソードのインパクトが弱い。言いたいことはわかるので、原作がというよりは、進行と見せ方の問題な気がするのだが…
目に心地いい安らぎ場面も多いため、ダレる展開が非常にもったいなく感じる。

「友達も家族も要らない。さよなら東京」
と吐き捨てるようにケータイを川に捨て、祖父母にませた敬語を使い、人と距離を取り、久しぶりの再会を喜ぶ精霊たちに冷たく当たる「the 鼻につくガキ」なミヨリが、祖母、精霊や友達から便りにされることで、もう小さな子供ではない、意思を持ち考え、「自分はどうしたいのか」という思考に向き合い成長していく。
父にも母にも捨てられたと思い込み、都会の同級生からはイジメられ心を閉ざす少女が、田舎の無邪気な同級生、同じように無邪気な精霊たちとの交流を経て、野山を駆け回る立派な田舎の子どもになっていく様は爽快。

そんな勝気で複雑な主人公をバチッとやってみせた蒼井優もさすがだが、個人的なブッチぎりのMVPはボクリコ役のアヤパンこと高島彩。最初からラストまで聞いても、およそ本人と連想できないぐらいのクオリティ。特に、イヌワシに姿を変化させてからの後半の頑張りは主役を上回るぐらいの瞬発力。そりゃあプロの声優でもっとコミカルな役作りも出来たのだろうけど、いち会社員アナウンサーがここまでできるのは単純にすごい。声の仕事をされてる方だからこそか。

精霊のビジュアルでいうと、頭がピクミンみたいで口がおしりみたいな『カサラギ』がお気に入り。

ダム工事業者を追い返すために、日本全国から精霊が集った結果、終盤が妖怪大戦争みたいになってるのはジワる。いいぞもっとやれ!片足掴まれて「これちょうだい」は怖すぎる。笑
そんな1番大事な局面で、借りたDVDに傷があったのか止まって数秒見れなかったことが残念すぎる……

子どもたちも手を繋ぎ合い車を取り囲む。
「手を離すなよ!」に男気。

そういえば、わたしの母も幼少期は母方の祖母の田舎へ預けられていた。ミヨリとは違い、海が近い田舎。
祖母を母親だと思い込んでいたので、迎えに来た派手な格好の母親のことは誰だかわからず、「あの人誰?」と聞いたらしい。
50年以上前とはいえ、小さな女の子が田舎で高齢の保護者と暮らす中では色々不便や危険なこともあっただろう。そう思うと、わたしの母も精霊に守られ生活していたのかな、なんて。。
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