のわ

マイ・インターンののわのネタバレレビュー・内容・結末

マイ・インターン(2015年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

灰色のスーツがとても似合う


着なれないシャツに袖を通してジャケットを羽織り、行きたくもない企業説明会に行く。僕もそんな年齢になったんだなと少し寂しく思うようになった。成人式の時に灰色のスーツが個人的にすごく好きで自分でお金を出して買ったのはすごく良い思い出だ。つきっきりで相手してくれた店員さんからは「渋いですね」と言われて、兄からは「おじさんみたい」と言われる。今思えばどちらも「あんまり似合ってないよ」と遠回しに伝えてくれたんだと思う。

本作見て真っ先に言葉に出たことは「ロバート・デ・ニーロ、灰色のスーツ似合うな」だった。そして、本作ではファッションサイトでCEOを務めるジュールズ(アン・ハサウェイ)は赤やピンクなど暖色の服を仕事場では主に着ている印象がある。反対にインターンに来るベン(ロバート・デ・ニーロ)は紺色や灰色のスーツ、紺色のバスローブなど寒色を好んで着ている印象がある。バディもの(作品)を作る際「凹凸コンビ」などのキャッチコピーがよく用いれる。僕のなかで印象的なのは「シャーロック・ホームズ(ガイ・リッチー,2010)」、「グリーン・ブック(ピーター・ファレリー,2019)」、などがある。本作の凹凸とは心理学者エリクソンが唱えた発達課題の達成と危機がそれに当たると思う。

情熱的な赤を着飾り仕事に打ち込むジュールズは夫からも距離を置かれ「孤立(心理危機)」することになってしまう。そんな彼女を助けるベンは余生を楽しみ自我の統合を達成することで心理危機はおそらくやってこない。そのような心理的に「追い詰められている者/開放された者」として、ジュールズはベンを必要としていく。原題「The intern」が邦題では「マイ・インターン」となったのはこのような要因ではないだろうか。

しかし、どこまでいっても彼らが完璧なバディとしての印象を持たず、やはりどこか赤の他人であるのは、ベンはおそらくジュールズの痛みを理解できていない節があり、ジュールズもベンを都合の良い相談相手としか見ていない。心理危機は訪れたものにしか痛みはわからず、達成したものにしか「感動がない」という思いはわからない。彼らの互いの痛みは決して伝わることなく、知ろうともしない。それでも僕は彼らのコンビをもう少し見ていたいと思うのは正反対の服を着て、なんだか心地良さそうに微笑む彼らが美しいと思ったから。
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