神田

人生はローリングストーンの神田のネタバレレビュー・内容・結末

人生はローリングストーン(2015年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます


ジェシーが好きで観た。彼の出ている作品は何でも高評価してしまうから、ただの萌え語り程度に記録しておく。

本作は、実在の作家デヴィット・フォスター・ウォレスを取材した、記者リプツキーの記録である。片や世間から評価される有名作家、片や作家を夢見ながらも記者として奔走する男。二人は取材旅行を通して笑い、ぶつかり合い、涙し、互いの心のもろい部分を吐きだしていく。

セリフの一つ一つは精密で、しっかり追っていないとなかなか頭に入ってこない。知的で繊細なやりとりは、二人の人生を象徴するかのように慎重に紡ぎ出される。

「人はきっと変われない
昔と同じ自分が残ってるから
主導権を奪われないよう抵抗してる」

大学時代、心を病んだというデヴィットは、そう語った。名声を得てもなお満足せず、むしろ自分を責めるような姿勢でいるデヴィットの、孤独な葛藤が表れたセリフだ。その言葉を受け止めたリプツキーは、涙を流しながら静かに頷く。それは名声や才能を欲するリプツキーと、名声や才能に苦悩するデヴィットが、唯一わかり合った苦しみだった。そしてこれはきっと、観ている人々にとっても感じたことのある苦しみではないだろうか。己の過去にとらわれ、克服しようともがくことは、きっと誰の心にもありうる苦悩のはずだ。

セリフの多い本作で、ジェシー・アイゼンバーグの芝居が光った。彼は己が話すときはもちろん、相手のセリフを受け止めるときも最高の芝居をする。そのささやかな瞳の動き、挙動、息遣いまで、至極雄弁に物語る。ほとんどが二人での会話で構成された本作が、ある種の緊張感を伴って退屈させないのは、まさに彼の演技力ゆえだろう。冒頭のシーンとラストシーンの対比に注目し、何度でもじっくり味わいたい。
神田

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