のわ

ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破ののわのレビュー・感想・評価

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「奇跡」って言うのは言い訳だ。どうしようもない状況で、なにもできない自分を抱えても「どうにかしてやる」って思いだけが存在してるなら、もうすべてが奇跡って言い張るしかない。


新劇場版エヴァンゲリオン2作目として位置する本作は「新世紀エヴァンゲリオン」を通して見ても特別な1作に感じる。碇シンジを中心として展開される鮮やかな戦闘シーンやアニメーションとは裏腹に悲劇的なプロットを僕達観客は見つめる。

式波・アスカ・ラングレーは密かに碇シンジを思い、綾波レイさえも心を開く。「新世紀エヴァンゲリオン(庵野秀明,1995)」「エヴァンゲリオン新劇場版:序(庵野秀明,2007)」では、「逃げちゃダメだ…」と嘆く碇シンジが印象的だったが、本作では「綾波を返せ」と何回もループしているような彼らの宿命と決然たる決別を感じる。

僕が個人的に望んでいた式波・アスカ・ラングレーの幸せは達成されることなく散ってしまう。彼女の強がりが生命力を感じさせる言動が僕の心で咀嚼されながら昭和の歌謡曲「今日の日はさようなら」がならされる。

「不可侵だった彼女の領域を決して侵されることなくそのまま破滅するなら幸せなのかもしれない」という思いも抱えつつ、奇跡を信じる僕の浅ましさが僕の心に一層深い傷をつける。

雑踏が真っ赤に染まったのは夕焼け空が綺麗だから。
のわ

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