のわ

ブラック・スワンののわのレビュー・感想・評価

ブラック・スワン(2010年製作の映画)
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狂気の非可逆性


心身二元論で僕たちを説明した場合、僕が考えるに体と心は虎視眈々と互いを狙いあっている。心は体を、体は心を自分の物にしまいと寝首を掻こうとしている。ニナ(ナタリー・ポートマン)は心に体を蝕まれ、体はそれを許さないと心と体にある距離を確立し、隷従させようとしている。しかし、ニナの体に自傷行為のような爪痕を残しながら脈々と心の存在を映し出す。
母親は潔白を守る守護者として、家を悪魔の介入を許さない聖域として、彼女の貞操を彼女以上に守ろうとしている。しかし、それは達成されない。かつて母自身も情欲に侵されたように、やって来る悪魔を払い除けることはできても、内に宿る悪魔を取り除くことはできない。
オルゴールの音色も次第に薄れていき、黒鳥の息づかいが不気味に木霊する。

白鳥として完璧なニナが黒鳥として、魂を焼け焦がすなら白鳥としての彼女は存在してはならない。白鳥が自身を滅ぼしたように
彼女の破滅もまた実行されなければならない
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