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サッドヒルを掘り返せのArataのレビュー・感想・評価

サッドヒルを掘り返せ(2017年製作の映画)
4.5
「続・夕陽のガンマン」の劇場鑑賞前に、予習的に鑑賞。

現在私は、マカロニウエスタンの傑作、荒野の用心棒、夕陽のガンマン、続・夕陽のガンマンと言う、ドル3部作の4Kリマスター版を劇場鑑賞中。
これらのロケ地は今どうなっているんだろうと言う素朴な疑問が、私の最近の話題となっていたある日、とある方から今作の存在を教えて頂いた。

※以下、「続・夕陽のガンマン」を「続〜」で統一。


今作は、「続〜」のラストを飾る墓地での決闘シーンのロケ地を、約50年経った後、訪れたファン達が有志を募り、埋もれてしまったまま放置されている状態から、撮影当時の状態まで復元させると言う一大プロジェクトの全容を収めたドキュメンタリー映像。

原題は、Desenterrando Sad Hillでサッドヒルを発掘するの意。
英題は、SAD HILL UNERTHED。
「発掘する」と直訳では無く、「掘り返せ」と言う形にする事で、彼らにとっての使命感が感じられるので、何となく良い邦題だなと感じた。


メタリカの登場SEが、「続〜」の決闘のテーマを使用している事を存じ上げなかった私は、何故ずっとメタリカが出てくるのか疑問だったが、ラストで大変に感動した。
最初のシーンも、メタリカのライブから始まるので一瞬戸惑った。
思わず、一度再生を中止して、タイトルを再確認する作業をしてしまった。

「続〜」の主演のクリント・イーストウッド氏、音楽のエンニオ・モリコーネ氏、編集のエウジェニオ・アラビーゾ氏、美術担当のカルロ・シーミ氏の御息女、などなどの関係者の皆様のインタビューと、今作撮影当時に既にお亡くなりになられているセルジオ・レオーネ監督の在りし日の貴重な映像まで、それぞれの視点で語られる形式は素晴らしい取材力。


様々な苦労と、一人一人のドラマが重なり、ロケ地の復元を目指すと言う貴重なお話しを聞く事が出来る。
今作の主役が、作品のファンと言う方々で、言ってしまえば「素人さん」もしくは「一般人」と言われる様な方によるものだと言う点が、とても素晴らしい。
「続〜」をご覧頂いていない方であっても、その様な素人さんや一般人と呼ばれる方々が、大きな事を成し遂げ、特別な存在になる瞬間を目の当たりに出来る貴重な映像だと言う点で、価値のある映像なのでは無いかと感じた。
自分の知らない世界を知る事が出来るので、この様なドキュメンタリー映像と言うものは、大変意義があり素晴らしい。


50周年記念バンドの皆さんの演奏も、技術的にはあまりお上手とは言い難いものかも知れないが、それ以上に特別な場所で演奏が出来る事の喜びを噛み締めているかの様な、心の美しさを感じるものだった。

また、引き込み方がベタな作りとも言えなくもなかったが、彼らにとっての最大のスターであるクリント・イーストウッド氏がサッドヒルの屋外上映会場のスクリーンに映し出された瞬間は、彼らの想いに同調し、思わず声を漏らし涙が溢れた。


私も、墓地の計画をこの時知っていたら、今頃私の名前が書かれた墓が、サッドヒルに建っていたかも知れない。


私も、サッドヒルで「続〜」を鑑賞した彼らの様に、今回の4Kリマスター版のスクリーン上映を、大いに楽しんで来たいと思う。
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