のわ

ライトハウスののわのレビュー・感想・評価

ライトハウス(2019年製作の映画)
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思い出を呼び覚ます装置

僕のなかで映画とは「思い出を呼び覚ます装置」としての側面がかなり強い。どの時期にどのような映画を手に取るか僕はすごく考える。だから、映画を見る時間よりも映画を選ぶ時間の方が自ずと長くなっていく。そして、どんなに好きな映画でも何回も見る習慣はなく、思い出が上書きされることはない(もちろん、例外は存在するが)。本作は、ロバート・エガースの「ウィッチ」を見たときに「この監督の次の映画は絶対劇場で見る」と心に決めて父親を誘い劇場に足を運んだことを覚えている。そして、その淡い期待は見事なまでに砕かれることになる。

モノクロームで描かれた神話体系を当時の僕は理解できず、ただただ、不気味な静寂と109分を共にすることになった。しかし、理解できずとも感じることはできる。不気味は狂気から来るものではなく、おそらく寂寥で酒は興奮剤ではなく、薬だと。しかし、そんな思いも虚しく、わからないものはやっぱりわからなかった。そして、退屈として僕の心をせしめることになったのだ。帰りの車内は、「期待はずれだったね」と僕が口にしたら、父親は意外そうに「まぁね」としか言わなかった。やけにこの会話が僕の心に残っている。
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