ティオ

ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバーのティオのレビュー・感想・評価

4.5
作品全体に哀愁が漂いつつ、同時に人間の底力も感じられる作品。
悲しみに暮れ、沈んだ心を抱えながらも、次々に降りかかる困難に何とか立ち向かおうとする、登場人物たちの芯の強さに感銘を受けた。

前作主演のチャドウィック・ボーズマンさんの訃報を聞いた時は本当に驚いた。
続編は厳しいのかなと思っていたのに無事に作品が公開されて、しかも完成度がこの上なく高い作品で満足しつつも、やっぱりどうしてもチャドウィック・ボーズマンさん主演で予定されていたストーリーも観てみたかったと思ってしまって、何だか悲しくなってしまう……。

冒頭の葬儀のシーンが頭から離れない。
あの marvelロゴが表示されたシーンでは思わず涙腺が緩んだ。

登場する人物・組織のそれぞれが、私腹を肥やすためではなく、組織のため・周りの皆のため・大事な人のために行動して、結果としてそれが軋轢を生んでいる所がもどかしい。
いっそのこと自分のためだけに行動する悪役の方が憎みやすいけど、そうではない所が物語に深みを持たせていて良い。

今作では悪役の立場のネイモアが、高潔な人物なのも物悲しい。
時代の流れや環境が違えば味方になっただろうに、そうは行かなかったことに憎しみさえ感じる。

海底都市に導かれた時のシーンが印象的。
シュリを歓迎した子どもたちの笑顔が眩しく、また、誘拐という強硬手段に出ながらも、何とか友好的に事を運ぼうと細心の注意を払うネイモアの姿が心に残る。
自分の意思と、王族として求められる立場との狭間に立たされるシュリの苦難も悩ましい。

最終的な着地点もシュリらしくて良い。
肉親を奪った相手を前に、自身の感情に振り回されず、王族として・ブラックパンサーとしての最適解を自力で導き出せた所に、シュリの成長を感じられた一方、成長せざるを得なかった環境がやっぱり物悲しい。
“自力で”踏み止まった所が、同じような状態に陥った時に他者に止めてもらったスパイダーマンとの違いかなと思った。
ティオ

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