Melko

本当の目的のMelkoのネタバレレビュー・内容・結末

本当の目的(2015年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

「刑務所には戻りたくないわ」
「戻らせない。…良い考えがあるの」

「レイプされたことは?」
「…2回あるわ」

辛く悲しい思いをした女同士でなければ、分かり合えない胸の内。
たった3日間でも、お互いに何か感じることがあり、思うことがあり、女たちは助け合う。

マケドニアの映画かぁ。ユーゴスラビアの構成国だった東欧の国。
国自体、内戦や紛争で辿った歴史があるからだろうか。淡々と進むストーリーに、雰囲気は重たく暗め。しかめ面の女性2人が主人公。

冒頭、立ちんぼをする女性マリカ。乗った車の男は借金取り?男に顔を殴られ首を絞められ、咄嗟に男の首に刃物を刺し、その場から逃げてしまう。お腹や顔に怪我を負い、傷だらけで電車に乗り込んだマリカ。女性と向かい合わせの席へ。彼女の名はヤナ。マリカのただならぬ格好にヤナは訝しがりつつ、少し会話する2人。
ボロボロのマリカに上着をかけ、ヤナは途中の駅で降りる。村へ進んでいくヤナ。ふと振り返ると、なんとマリカがついて来ていた…

アッシュ色のカーリーヘア、マリカは殺人犯。身体に怪我を負い、息も絶え絶えでたまたま出会ったヤナに泣きつく。バッチリメイクが落ちると、素朴だが笑うと愛嬌のあるお顔。
一方のヤナは黒髪おかっぱで堅物の雰囲気。男なんて信じない…双子の妹クリスティーナは海外にいるようだ。
徐に取り出す散弾銃。彼女は、何かをやろうとしているらしい。。
彼女たちの周りをうろつくいけすかない警官、ガンツ…(ゲンツ?)

本当に淡々と進行されるストーリーで、回想シーンなどは一切なく、過去起こったことやマリカとヤナの心境や行動は、彼女たちが淡々と交わす会話から紐解かれていく。ほぼ会話劇みたい。ご都合主義な展開もあるけれど、やはり終盤明かされる真実や、マリカとヤナの不思議な結託にはグッときてしまった。

ヤナとクリスティーナは大の仲良しだったが、ガンツと3人で仲良くしてることに、クリスティーナには微妙な気持ちの引っかかりがあった。
そんな彼女は、12歳の時、彼女の父が建てたホテルへ遊びに行こうとガンツに誘われ、喜んで行ったが、なんとその先で散弾銃を突きつけられ脅され、レイプされる。それを見てしまったヤナ。「次はお前だ」とガンツから追いかけられたヤナは、走って逃げた末にフェンスを飛び越え落下。昏睡状態になってしまう。

マリカとヤナはウィスキーを飲んで爆笑する。情緒の不安定さは女性のソレ。意を結したヤナとマリカ。
「私に良い考えがある。」
「あなたの言うことなら……クリスティーナ。」
ヤナとクリスティーナはよく似ているが、クリスティーナの背中には、スズメバチに刺された痕の傷がある。
背中の傷。抱き合う2人、マリカが背中の傷に触れる。
マリカを助けたのは、ヤナでなく、クリスティーナだった。

クリスティーナは、ヤナの長い間の延命治療を停止し、村に戻った。
ガンツに復讐するために。

髪を切って染めたマリカ。(そんな短時間で染まるか…?てのは野暮か)
見た目がそっくりになった2人

マリカの存在に気づいたガンツの姑息な取引に応じ、土地を手放したクリスティーナ。
このまま汚い奴が私服を肥やすのかと思いきや。
逃げたはずのマリカが散弾銃を向け、クリスティーナが追い詰め、2人は一発ずつガンツの腹に撃ち込む。

そしてマリカは国境を越え、クリスティーナは警察の事情聴取に。
同時にガンツの死体も見つかる

この先2人はどうなるのか。どうなったとしても、
突き動かされた衝動、この人のために力を貸したいと思った気持ち、積年の恨みをやっと晴らした心
彼女たちの未来は泥臭く例え暗くとも、後悔はしていない
そう感じるラスト

絶妙な距離感の2人を演じた女優がとても良い雰囲気を出していた。
眼差しの力強さと冷たさ
特にヤナ/クリスティーナ役の女優の、乾ききった演技が独特で印象に残る
Melko

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