Takashi

PIG ピッグのTakashiのネタバレレビュー・内容・結末

PIG ピッグ(2021年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

この作品、かなり好きです。

ロブ(ニコラスケイジ)は山奥で豚と二人で暮らしている。
ロブ人とあまり交流をしていないようにみえる。そこから、ロブは人生や世の中にあきらめ、山にこもっているいるように見える。
ところがロブがそのような人物ではないことがよくわかる。それがレストランでのシェフとの会話である。
ロブはシェフに
「お前はイングリッシュパブをやりたいと言って店を辞めたのに、どうしてこんな店(高級店)をしているのだ?」
と尋ねる。
そして、ロブは、次のことをこのシェフに言う。

「この店の客も、この店に来る批評家も皆本物ではない。何もかもが本物ではないのだ。それはこの店の料理もお前も本物ではないからだ。
どうしてお前は周りを気にするのか?
周りの人間はお前のことに関心がない。それはお前が本気で勝負していないからだ。
毎朝起きると自分が消えかけている。お前は周りのために生きているが周りの人間はお前のことなど知らん顔だ。お前は自分を見失っている。
本気になれることはそうはないのだぞ」

このセリフは、この映画のテーマだと思う。
ロブは一見するとホームレスのようで世間から忘れられた人間のようにもみえるが、実はそうではない。
ロブの名前を出せば皆が納得する。それは、ロブが本気の人間だからだ。
このレストランのシェフはロブのようにはなられなかった。つまり周りに気に入られようとばかりして本気で生きていない人間なのだ。だから、このシェフは世間から相手にされているようで、実は全く相手にされていないのだ。

もう一人、ロブの対極にある人間が登場する。それが、トリュフバイヤーの青年の父だ。
この父親は自分の子であるトリュフバイヤーの青年に対して父親らしい振る舞いを全くしていない。
このことにロブは怒りを感じている。
一方、ロブは、自分と一緒に生活するトリュフブタについて、トリュフ探しが上手いからではなく、自分の子供としての愛情を持って育てている。
つまり、ロブのこのブタに対する愛情は本気なのだ。
だから何が何でも「俺のブタを返せ」と言い続ける。

本作は、本気で生きるとは?本気の愛とは?について描かれた作品で、とても素晴らしいと私は思いました。
Takashi

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