Arata

ウォンカとチョコレート工場のはじまりのArataのレビュー・感想・評価

3.9
原作のロアルド・ダール氏の作品を少年時代に読み、作品のファンになる。

数年前、とある本を読んだ事をきっかけに読書にハマり、その時に私の読書の原点とも言えるロアルド・ダール氏の本も購入した。
少年時代は、図書館で借りてきて読んでいた為、初めて所有する事にとても感慨深いものがあった。


今年10月には、大好きなウェス・アンダーソン監督が、Netflix限定の短編映画を4作品発表。その全てがロアルド・ダール氏の原作だった事もあり、自身が所有する本を読み返し、ついでに「ファンタスティックMr.FOX」、「チャーリーとチョコレート工場」、「チョコレート工場の秘密」、「マチルダ」などもサブスク動画で見直したりもして、ロアルド・ダール尽いた下半期を過ごさせていただいた。


そんな締めくくりに、今作を妻と劇場で鑑賞。


【あらすじ】
1人の青年が、世界一のチョコレート屋さんを目指し、チョコレートの聖地へやって来る。

しかし、都会の掟とでも言える人間の闇などに触れ、苦しみ、思う様にいかず挫折を味わうが、仲間たちの協力を得ながら、夢を実現させようと奮闘する。

夢を叶える為に大切なものは一体なんなのかを、少年時代に母から受け継いだ言葉を糧に、仲間たちと協力しながら困難に立ち向かっていく。


ロアルド・ダール氏原作の「チョコレート工場の秘密」に登場する天才的なチョコレート作りの魔術師「ウィリー・ウォンカ」の、チョコレート工場が出来るまでの前日譚で、原作や過去の映像作品などからインスピレーションを得た創作の物語で、夢と希望とお菓子が詰まった、ホットチョコレートドリンクの様に心が暖まるファンタジーミュージカル。


【感想など】
・キャスト
主演のティモシー・シャラメさんの歌唱力に「この俳優、歌もいけちゃうのか」と驚いた。
「チャーリーとチョコレート工場」でのジョニー・デップさんの快演と比較されるかも知れないが、「チャーリー〜」ではチョコレート工場が完成し、その後仲間に裏切られて、誰も信じられなくなったウォンカさんと、「今作」でのまだまだ純粋無垢なウォンカ君との違いがあると思われるので、あくまで前日譚として鑑賞する事をおすすめする。
そう言った意味では非常に良かった。


・チョコレート
奇想天外なチョコレートの作り方から、出来上がったチョコレートの見た目、そして食べた人達の美味しそうな表情に、チョコレートを食べたいと言う欲がもの凄く高まった。
こう言う作品では、登場する食べ物や飲み物を、自分も食べたり飲んだりしてみたいと思わせる事が、実はとても重要な事だと思う。
美味しそうに見えなければ、話の内容が入り難くなってしまう。

ところで、以前「ウォンカのチョコレートバー」が販売されていて、少々高めの価格だったものの、非常に美味しかった記憶があり、あれをまた食べたいなと思い調べてみると、現在では販売されていないとあった。
今作をきっかけに、また売られないかなと淡い期待を込めて待つ事にする。


・名言
心に残る名言が多く、幼少期にこの作品に触れる事で、人格形成の上で非常に影響力がある様に思えた。
そう言った意味では、メリーポピンズの様な存在と思えた。
「夢見る事から全ては始まる」
「分け合う事が大切」
など、とても良い言葉。

特に、ラストの分け合う事の大切さを語るシーンでは、それまでのストーリーやウォンカの想いなどを踏まえて、思わず込み上げて来るものがあった。


【お酒】
宿のウェルカムドリンクのジン。
3人の悪人が、教会の地下の秘密の部屋で飲んでいるお酒。
船の上でウンパルンパが飲むお酒。
ラストで、教会前の広場で振る舞われるホットドリンク。
など。

・ジン
まずはジン。
ジンは、1751年にイギリスの画家ウィリアム・ホガースが描いた一対の風刺画、「ビール街」と「ジン横丁」などに代表され、ディストピアの象徴とも言える意味を持つお酒で、ウォンカへのウェルカムドリンクで提供されるこの宿が、とても良くない場所であると言う事を暗示していると感じた。


・カクテル
次に、秘密の部屋で飲むお酒。
濃い茶色に、上部が白く泡立って見えるショートカクテルを飲んでいる。
チョコレートのリキュールを使用したカクテル、「アレクサンダー」の可能性が高い。
ブランデー、カカオリキュール、生クリームをシェイカーに入れてしっかりと冷やし、上からナツメグを振りかける。
比重の関係で、生クリームが上に浮き、故に上部が白く泡立って見える。
ガーニッシュには、まるでオリーブかサクランボか何かかの様にカクテルピンが刺さったまん丸いチョコレートも印象的。


・ウンパルンパのカクテル
そして、船でウンパルンパが飲むカクテル。
緑の液体、ピンクの液体を順に入れ、スリーピースのカクテルシェイカーで作って飲んでいる。
緑はミント、ピンクはベリー系だろうか。ピンクのチョコレートかも知れない。
内容は不明だが、きっと美味しいに違いない。

気になったのは、シェイカーの使い方。
スリーピースのシェイカーは、液体や氷などを入れる「胴体」、氷などを濾過する「ストレーナー」、そして「フタ」の3っつのパーツからなる物で、故にスリーピースと呼ばれる。
使用法は、まず全てのパーツをはずし、胴体に液体や氷を入れ、ストレーナーをセットしてから、フタをする。
しかしウンパルンパは、ストレーナーとフタとを外さず、胴体にお酒などを入れ、「ストレーナーとフタとがくっついた状態で」、セットし、シェイクし、フタをはずして注いでいた。
何が気になるのかと言うと、フタをつけたままストレーナーをセットすると、フタが外れ難くなってしまったり、最悪まるで外れなくなる事もある。
ウンパルンパが怪力なのを表現しているのだとしたら分かる人が少なそうだし、細かい事を気にしないと言った性格には思えないので、とても引っかかるシーンだった。

・ホットドリンク
ラストで、教会前の広場で振る舞われる飲み物。
色からして、ホットチョコレートドリンクもしくはココアかと思われる。
寒い季節に、あったかいココアもしくはチョコレートドリンクは、最高に美味しそう。
ウォンカさんのホットドリンクを飲んでみたい。


【総括】
夢と希望、そしてお菓子が詰まった素敵な映画。

歌もメロディアスで、つい口ずさみたくなる。

一枚のチョコレートバーを、誰かと分け合いたくなる、そんな映画。
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