ハルノヒノヨル

⻤太郎誕生 ゲゲゲの謎のハルノヒノヨルのネタバレレビュー・内容・結末

⻤太郎誕生 ゲゲゲの謎(2023年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

幼少期に鬼太郎テレビシリーズを見ていた。
いちばん怖かったのが「牛鬼」で、四国の古い日本家屋の親戚の家で見たものだから余計に怖かった。
なにせ家がフルオープン。ムカデもヤモリも野良猫も自由に入ってくる。
牛鬼に襲われたらひとたまりもない。

私にとって鬼太郎の記憶は田舎の小さな集落と共にあるもので、哭倉村はその集落とは真逆の排他的な印象だ。
公開当時の少し前から流行していた『因習村』モノであって、また横溝正史などの名作も多くあり目新しさはない。
欠けた茶碗で入浴を楽しむ目玉おやじの存りし日の姿、鬼太郎の母の容貌崩れる以前の姿に驚くくらいで、ミドリ十字や売血の歴史も知っていたから衝撃的な展開ということもなかった。
そのため、オカルトものとして充分には楽しめなかったと感じている。
ただ、大義を掲げて不誠実な権力を弄ぶ人間の愚かさが、鬼太郎が得るはずだった幸せを奪ったことが悲しい物語であった。
奪われたのは鬼太郎だけじゃない。
時弥、沙代も、庚子、丙江、乙米、孝三、時麿も同じだ。
子どもが子どもらしくいることができない世界は大人が作っている。

牛鬼は子どもだった私を正しく恐れさせ、自然しかない田舎で多大な刺激となった。
牛鬼の伝承は親戚の家のある愛媛にも伝わっている。
私は二週間を震えて過ごした。
ハルノヒノヨル

ハルノヒノヨル