Takashi

スティルウォーターのTakashiのネタバレレビュー・内容・結末

スティルウォーター(2021年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

すごくよかった。深い話だと思う。

途中、演劇の練習の場面で「真実は分からない。あるのは物語だけ。」というセリフが出てきたと思うが、これがこの作品のテーマであるように思う。
あと「受け入れる」ということもこの作品のテーマだろう。

本作の最後の方で、弁護士がビルに対して、DNA鑑定の結果リナ殺害事件の捜査が再開されることを伝える。
そのとき弁護士は「ベイカーさん、(娘のアリソンが釈放され、捜査が再開されるのが)ご家族にとって最良の結果です」と言った。この弁護士のセリフはビルには全く響かない。だってそうだろう、ビルはこのときすでに「真実にこだわったせいで大事な人との生活を失っている」からだ。だから、このときすでに、ビルは「真実よりも大事なものがあるのではないか」ということを感じ始めている。

スティルウォーターに帰ってから、娘のアリソンはビルに対して、リナ殺害事件の真相(?)告白する。
アリソンは「リナを殺すつもりはなかった。家から追い出すだけでいいといった。彼がまさか殺すとは思わなかった」と説明した。いやいや、このアリソンの説明は極めて不可解だろう。だって、リナを追い出せばいいのであれば、そんな危ない橋は渡らず、自分が出ていけばそれで済むはすだからだ。やはりアリソンはリナ殺害の主犯ではないか?私はそう思う。
おそらく、ビルも、アリソンがリナを殺害したと薄々思っている。だけど、スティルウォーターに戻った彼は以前とは変わっている。ビルは、真実を掘りおこすよりも目の前の幸せを大事にしようと思うようになっている。だから、娘のアリソンの不可解な説明に対しても「わかっている」と受け入れた。彼は娘との平安な生活を優先しようと決めたのだ。

ラストの場面で、ビルが「スティルウォーターが以前とは全く別のところのように思える」と言ったのは、スティルウォーターではなく、ビル自身が大きく変わったことを示している。
ビルは、ろくでもない真実にこだわって幸せを壊すよりも、もっと大事なものを守っていこうと決めたのだ。

結局、真実って分かるものではなかったりする。
そもそも真実は一つでないのが普通(ある出来事に対するとらえ方は人によって様々)だと思う。
その中で何を大事にするのがよいのだろうか?
なかなか難しい問であると思う。
Takashi

Takashi