Nanami

オッペンハイマーのNanamiのネタバレレビュー・内容・結末

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

めちゃくちゃ疲れた。長いしセリフ難しい。
広島と長崎での実被害にはあまり触れない代わりにオッペンハイマーがその手で行った実験だけはちゃんと描かれる。
実験成功後の原爆は軍と政府のもとに渡り、あとは何の権限もなくなってしまうから残酷。どのように使うかは政府次第だけど、生みの親だって責任は負っているのだから。
8月6日と9日の投下は成功し、「すごい爆発だった」という報告を受けて胸騒ぎがするオッペンハイマー。だが開発者として実戦での使用成功を祝福しなくてはならない。
原爆投下成功万歳!誇りに思う!ドイツにも落としたかった!という心ここにあらずなスピーチに熱狂する観衆、やまないオッピーコール。まさに狂気、狂気、狂気。
ここを気持ち悪いと思うのが日本人だけではないことを願う。いや震えるよ。あまりにグロテスク。

被害の実態を聞いて次第に青ざめていき、時間が経つにつれて世間の彼への風当たりは一転して厳しくなる。
キリアンの細かい表情の変化には脱帽。喜び、悲しみ、苦しみをすべて純度高く表現する青々とした瞳に釘付けだった。

オッペンハイマーは純粋な学者で、ビビりで女性関係にだらしないような人間くさい男。
政治に利用されていると自覚しながらも、誰かに頼られ、求められる喜びからとんでもない新兵器を生んでしまった。

英国人であるノーラン監督、アイルランド出身のキリアン・マーフィーなど、メインの作り手に非アメリカ人が多いからこそできたのではという攻めた表現も多々あり。(トム・コンティのアインシュタイン最高だった…)
これがアメリカで大ヒットしたのは大きい。全体的には自省的な内容になっていると思う。
アメリカではずっと、原爆投下は日本を降伏させ戦争を終わらせるための唯一の手段だったとして正当化されてきたと聞く。
本作には直接的に被害を描くシーンはなかったにせよ、そんな共通認識に疑問を投げかけ、原爆を人間相手に使ったことがどんなことだったのか考えるきっかけになっていればいい。
Nanami

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