ハルノヒノヨル

ラーゲリより愛を込めてのハルノヒノヨルのネタバレレビュー・内容・結末

ラーゲリより愛を込めて(2022年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

親さえも当事者ではない時代の日本に生まれて、戦争は遠く画面の向こうの出来事だ。
けれど地球上では戦争がない時がなく、その余波はここ日本の物価にも及んでいる。
よく考えると、戦争は意外と近くに存在している。

シベリア抑留について、その過酷さはよく語られるが、他の戦争体験ほどには私は知らない。知ろうと思えば手記でもなんでもあるのだが触れてこなかった。
この映画での描写も既知の程度であって、過剰に感情に訴えるものではなく、淡々としている。
日本とは比べものにならない厳寒の異国の地で、低栄養で重労働をさせられ、感染症や凍傷に見舞われ、上官からの虐待に耐える。階級の低い兵士は多く死んだと聞く。
本作では、日本兵同士の関係性に視点の多くを割いており、それが遺書を届けるシーンに活きる。

予告を見たとき、遺書を記憶することを拠り所に過酷な環境に耐えた物語なのかと思った。
そういう面もあるだろうが、因果は逆で、彼らが過酷な環境を耐えられた、拠り所になっていた人があって、だからこそ何としても彼の遺書を届けねばと帰国(ダモイ)のかなうその時まで必死に覚え続けた。
故郷の母、残してきた妻子、苦境を乗り越えようと共に希望を見てきた仲間。
拠り所は人だ。
人と紡いだ記憶だ。

最後、同作品を過去にドラマ化した際の主演であった寺尾聰が登場したのは、にくい演出であった。
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