ThePassengerさんの映画レビュー・感想・評価

ThePassenger

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越前竹人形(1963年製作の映画)

3.0

夫婦となりながりも妻の玉枝を偶像化し、その手にすら触れようとせず、思いの丈を人形作りに込める喜助。そんなふたりの関係を情緒豊かに描く。何処かに不穏さをはらんだ前半までの流れは良かったと思うが、後半はい>>続きを読む

妻は告白する(1961年製作の映画)

4.5

サスペンスとしては勿論のこと、ラヴストーリーとしても秀逸。また、彩子が幸田の勤め先を訪れるシーンで彼女が覗かせる情念には怪談めいた恐ろしさなども感じさせ、そうした様々な要素を併せ持つ部分に大きな魅力が>>続きを読む

銃殺(1964年製作の映画)

3.0

第一次大戦の最中、砲弾の飛び交う戦地にて問われる逃亡兵の罪。審判を下す者も、検察人も弁護人も全て同じ隊に属す上官たちによって行われる裁判は茶番劇に他ならず、その判決理由に至るまでのあらゆる不条理さこそ>>続きを読む

死刑台のエレベーター(1958年製作の映画)

4.0

若かりし頃に観て以来、およそ40年ぶりの再鑑賞。演出・脚本・撮影・音楽・配役の全てに優れ、サスペンス映画の見本みたいな作品だと改めて実感(ただし、夜の7時とは言え、まだ周囲の明るい時間帯にビルの外側か>>続きを読む

コンプリート・アンノウン 私の知らない彼女(2016年製作の映画)

2.5

手頃な長さのサスペンスを観ようとチョイスしたのだが、やや想定外の展開。絶えず自分を変え続けてきたアリスと、ずっと変わらないことを美徳とするかの如く保守的に過ごしてきたトム。久々に再会した元恋人同士の人>>続きを読む

昨日消えた男(1964年製作の映画)

3.0

推理好きの将軍吉宗が同心に成りすまして殺人事件を追う水戸黄門的作品。クールさとコミカルさを併せ持つ市川雷蔵の魅力もあってエンタメ度は高い。偶然行動を共にする宇津井健とのバディぶりもなかなか。ただし、幽>>続きを読む

ふたりの5つの分かれ路(2004年製作の映画)

3.0

現在と過去が断片的に交錯するパターンは割とポピュラーだが、それとは異なり、幾つかのターニングポイントを中心に夫婦の別離から馴れ初めまでの過程を遡っていく展開は新鮮。果たして離婚後のふたりがどんな路を辿>>続きを読む

ソフト/クワイエット(2022年製作の映画)

2.0

これから週末を迎えて気分が浮き立つ金曜の夜に観る映画ではなかった。心の在り様は表情に出ると言うが、揃いも揃って険がある顔つきをした連中の取る愚かな行動にはウンザリするばかり。最初は一般社会における疎外>>続きを読む

エヴァの匂い(1962年製作の映画)

4.0

アメリカで吹き荒れた赤狩りの嵐を逃れ、イギリスやフランスに活動の場を求めたジョゼフ・ロージーは極めてヨーロッパ風の映画を撮るフィルムメーカーだ。ヴェネツィアが舞台の「エヴァの匂い」はそんな彼のセンスが>>続きを読む

春の雪(2005年製作の映画)

2.5

最近三島由紀夫の原作を再読したので、併せてこの映画版の方も鑑賞。主要キャラのひとりで、「春の雪」に続く第二部「奔馬」においては大きな役割を担う書生の飯沼(清顕の教育係)が出てこなかったり、多分に自己陶>>続きを読む

秘密の儀式(1968年製作の映画)

3.0

いかにもジョゼフ・ロージーらしい不穏さを全編に漂わせるものの、娘と義父の関係性などを始め今ひとつボンヤリとした部分が散見され、やや消化不良気味。恐らくは心理描写が主体ではないかと推測されるアルゼンチン>>続きを読む

無伴奏(2016年製作の映画)

2.5

原作となった小池真理子の半自伝的作品を読み返した流れで、映画版も鑑賞した

60年代末から70年代初めにかけての熱く乾いた世相の雰囲気はよく再現されていたものの、粗筋を駆け足で追ったという感じは否めず
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それでも私は生きていく(2022年製作の映画)

3.5

フィクションめいたエピソードを挿入せずに私たちが普段の生活で実際に経験しそうな話を等身大の登場人物たちが自然体で演じていく撮り方はミア・ハンセン=ラヴらしさに溢れている

身体の不自由な父親をタクシー
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暗くなるまでこの恋を(1969年製作の映画)

2.0

トリュフォー、ベルモンド、ドヌーヴのレアな顔合わせに期待をしたが、映画自体は凡庸な出来に終わった。ウィリアム・アイリッシュ(コーネル・ウールリッチ)の小説が原作にしては、サスペンス性にも乏しく、途中で>>続きを読む

aftersun/アフターサン(2022年製作の映画)

3.5

台詞に頼り過ぎず、流れのなかで観客のイメージを喚起するように企図された映画脚本こそが理想と考える私にとって、この「アフターサン」はかなり好みに近いカタチと言える

思春期を迎えた娘ソフィとその父親カラ
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めし(1951年製作の映画)

4.0

いままで小津安二郎の映画をただの一本も鑑賞していない私は、彼のミューズたる原節子についても殆ど予備知識を持たなかった

夫との関係に倦み、淡々とした味気ない結婚生活に身も心も疲れ果てた女が本作における
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波紋(2023年製作の映画)

2.5

俳優・筒井真理子の存在は「淵に立つ」を劇場で鑑賞したときに初めて知った。あの作品で筒井が演じた人物は、或る出来事を境に、その前後でまるっきり別人になったかのように映り、そうした内面から滲み出す雰囲気の>>続きを読む

日曜日には鼠を殺せ(1964年製作の映画)

4.0

一度聞いたらついぞ忘れそうにない強烈なインパクトを持つ邦題は原作となった小説のタイトルがもとのようだ(原題は黙示録の一節「蒼ざめた馬を見よ」)。今回これを鑑賞しようと思い立ったのは他でもなく題名に惹か>>続きを読む

ワイルドバンチ/オリジナル・ディレクターズ・カット(1969年製作の映画)

2.5

以前から一度は観ようと思いつつ、なんだかんだと先延ばしにしてきた「ワイルドバンチ」をようやく鑑賞。ペキンパーの最高傑作として推す声も多く、期待は膨らんだが、かなり落胆させられる出来だった

冒頭と終盤
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鞄を持った女(1961年製作の映画)

4.0

ズルリーニの映画は昨年「激しい季節」を鑑賞しており、その際に本作もリストへ登録した。両者とも年上の未亡人に恋心を抱く青年を描いたものだが、同じくズルリーニ演出で以前より観たいと思いながら未だ願いが叶わ>>続きを読む

LOVE LIFE(2022年製作の映画)

3.5

矢野顕子のあの特徴ある声が個人的に今ひとつ好きになれなくて、彼女の楽曲をまるで知らない。従って、監督・脚本・編集を担う深田晃司がインスパイアされたタイトル曲についてもこの映画を観るまで全く聴いたことが>>続きを読む

ジャイアンツ(1956年製作の映画)

3.0

年明け最初に鑑賞する映画として、普段はどうしてもためらいがちな長尺のものを観ようと思い、かなり前にビデオを借りた記憶が残るのみで、内容自体はすっかり忘れてしまった本作をチョイスした

アメリカ南部テキ
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カード・カウンター(2021年製作の映画)

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監督・脚本を務めるポール・シュレイダーの最新作「カード・カウンター」は、タイトルから連想される通り、「ハスラー」や「シンシナティ・キッド」(劇中の台詞で両者に言及される場面あり)の系譜に連なるギャンブ>>続きを読む

離婚しない女(1986年製作の映画)

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にっかつロマンポルノで名を馳せた神代辰巳がメジャー系(松竹)で撮った一般映画。ひとりの男が同時にふたりの人妻を愛するという題材に惹かれて鑑賞したが、登場人物の背景がボンヤリしているため具体性に欠け、期>>続きを読む

暗殺の森(1970年製作の映画)

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ベルトルッチの名声を一躍高め、映画史上に残るマスターピースとして評価される作品だが、中身の濃いモラヴィアの原作小説「同調者」に較べると、内容は随分物足らなく感じる。登場人物の掘り下げ方が浅く、全くもっ>>続きを読む

赤い天使(1966年製作の映画)

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数ヶ月前に観た「清作の妻」は、私が監督・増村保造に抱いていたイメージをいい意味で覆す傑作だった。そして今回鑑賞した「赤い天使」の内容もまた、それと肩を並べる重厚さであり、彼の類まれな演出力に対してはた>>続きを読む

欲望という名の電車(1951年製作の映画)

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数日前、「欲望という名の電車」の新たな舞台公演が発表された

主役を任された沢尻エリカについて、私はかろうじて名前と顔が一致するくらいで、出演した映画やドラマの類は一切観ていない。従って彼女の俳優とし
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禁じられた情事の森(1967年製作の映画)

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カーソン・マッカラーズが著した「心は孤独な狩人」(村上春樹訳)の高い完成度には唸らされた。そこで今回はその天晴な処女作に続き、彼女が筆を執った「黄金の眼に映るもの」の映画化作品を改めて鑑賞することにし>>続きを読む

未来よ こんにちは(2016年製作の映画)

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個人的に、映画の要素として「感動」だとか「ハートウォーミング」だとかを求めていないので、通常ならこの何とも前向きな邦題の付けられた作品には一切見向きもしないところなのだが、今回は監督のミア・ハンセン=>>続きを読む

心中天網島(1969年製作の映画)

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演出、撮影、美術、音楽。あらゆる面において豊かなイマジネーションを感じさせ、近松門左衛門原作の古典芸能と前衛的アプローチとを巧みに融合したハイブリッドな映像からは篠田正浩の才気がヒシヒシと伝わってくる>>続きを読む

チャタレイ夫人の恋人(1995年製作の映画)

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つい最近、D・H・ロレンスの書いた原作を読んで感銘を受けたこともあり、自然と映画の方にも興味がわいた。心情描写を主とするあの小説の世界観をフィルム上で表現するのはかなりハードルが高く、どうせ男女の肉体>>続きを読む

別れる決心(2022年製作の映画)

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今年劇場公開されたなかで個人的に最も注目していたのが本作。韓国映画に触れる機会が少ない私にしては非常にレアなケースだが、車のリアシートに座る男女を写した宣伝用ポスターにおいて、すでに心は離れてしまった>>続きを読む

女の中にいる他人(1966年製作の映画)

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長谷川和彦がメガホンを取った「青春の殺人者」において、父親を刺殺し自首しようとする息子に対して母親が「これは我が家の問題で国や法律は関係ない」と出頭を引き留めるシーンは、市原悦子の鬼気迫る演技と相まっ>>続きを読む

左利きの女(1977年製作の映画)

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ヒロインの家には小津(安二郎)を写したポスターが飾られ、シングルマザーの彼女が小学生の息子と映画館で観るのもまた小津のモノクロフィルム。従って、恐らくこの作品自体が小津の強い影響下にあるものと思われる>>続きを読む

クラッシュ(1996年製作の映画)

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クルマの運転とセックスの関連性についてはしばしば取り沙汰されるが、様々なテクニックを用いて相手と一体になり、気持ちの昂ぶりによってエクスタシーを得るところなどは確かに共通しているのかもしれない

本作
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鉄輪(かなわ)(1972年製作の映画)

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自分を捨て後妻を娶った元夫への嫉妬と恨みから鬼と化す女を描いた能の演目「鉄輪(かなわ)」を原案に、平安時代と現代とが巧みに交錯するストーリーは、男女の性愛シーンがふんだんに盛り込まれ、まるで前衛的ポル>>続きを読む

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