冒頭、退屈な時間というか間延びするように見えていた時間たちの意義を後から咀嚼したくなるような映画。
想像よりも後味のしんどさが大きくて、1人で見に行かないでよかった。
ただ涙して終わっていい作品でもなかった。
2009年デリー最高裁で刑法377条(イギリスの影響で成立)記載の同性間の性交渉が犯罪ではなくなり(これにも10年かかった)、2013年にそれが覆り、また2018年に非犯罪化する…。
文字にしてしまうとそれだけだけれど、その間人生を生きた人たちは存在が「犯罪者」になったりならなかったりするわけで。
全くもって他人事じゃなかった。
今でこそ西洋が進んでるけど、ホモフォビアを広めたのは帝国主義でもあるんだよな…。
現代日本にもSNSでアクティビストを非難する人たちがいるけど、やりたくてやってるんじゃない、これに尽きる。やらないと生きられないからやってるんだよな。
本作に出てくる教授もまさにそれで。他者の悪意によって全国ニュース扱いになってしまったからこそ歴史的な裁判の原告にまでなってしまった、ただことばを愛する詩人のおじさんだった。
軽率に愛とか最高!とかいうのを嫌う、ことばを紡いで詩や歌の世界に没頭するのが好きなおじさん。
裁判シーンで教授が暇で翻訳したり居眠りしたりするのもすごく良くて、彼の本来の興味感心と、彼が今人生に本来不要なはずの時間を他者の悪意と構造的な差別により過ごしていることがよくわかるシーンだった。
住処も仕事も奪われて、いったい彼が何をした、という。
異性愛と同性愛シーンを並べることで視聴者側のバイアスに働きかけるシーンとか、色々と良くできていたと思う。
ラストは本当に衝撃で。でもインドってこういう国だよな、とも思った。