ねまる

コラテラル 真実の行方 シーズン1のねまるのレビュー・感想・評価

3.7
Brexit後のイギリスについて、サスペンスという形で提起をしている社会派ドラマ。

犯人が誰か、動機が何かではなく、むしろ事件はそれぞれの事情を繋ぐためのものであり、社会に生きる人たちが現実に直面する問題を描く群像劇。

たった4話のミニシリーズなのに、視点人物が多いのと、色んな立場の人物の状況か絡み合っているのでかなり複雑。難しい問題を単純化せず、エンタメ化せず、誰かの立場を矮小化しないという意志は強く感じられたが、これだけのキャストを集めて、たった4時間で描こうとは無理があったのではないかと感じる。
もしくは視点人物をキップ、カレン、サンドリンに絞るとか…
全部は回収できないのに、今その問題まで広げる必要ある?と感じた。

それすらも、ねじ伏せているものがあるとすれば、キャストの演技力でしかない。
少ない出番で、それぞれが、それぞれの役柄が抱える問題と苦悩を見せている。誰もが見応えがある。ここまで全キャラに書き込めるのはデヴィッド・エアの手腕なのか。
ベン・マイルズはただ勿体無いが、ジョン・ヘフナン、ニコラ・ウォーカー、ビリー・ハイパーは各場面のハイライトであり、ジャニー・スパークはストーリーを一筋縄でいかせない深みをもたらす人物だった。

そして、1番遠くに配置されているように見える2人キップとデヴィッドを答えとしてこの4話をまとめる結末には脱帽。
事件の起こる社会との外側と1人の人間の内側、全く違うものを同じ話、同じ周辺人物で描いてたんだ。
キップもデヴィッドも自分の正しさを持っていて、全部を守れると信じてる。ベットから出て、全部守るために並走して、守れなくて、また帰っていく。
あとちょっとだったと振り返るキップと、大事なものを見定めたデヴィッドには、希望を感じられた気がした。
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